バイト代50万円で投資を始める

 株式投資を始めたのは、20歳になった95年12月でした。家業の文房具店の手伝い以外、高校生まではバイト禁止の家庭で資金がなかったのと、父が株式投資を快く思っておらず、証券口座を作ることに同意してくれなかったためです。

 当時は、私立文系の大学に通っていて、父の方針が「公立大学の学費分までは出すが、それ以上の学費は自分で稼いで払え」だったので、大学1年生のころからサークルにも入らず、大学の授業よりもアルバイトを優先する生活をしていました。

 20歳になれば自分で証券口座を開設できるようになります。

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 95年7月(誕生日の2か月前)から株の入門書を何冊か買って勉強を始め、貯金が100万円になった同年12月に50万円を持って証券会社の店舗へ訪問を始めました。

 当時は、まだWindows95が発売されたばかり。家にPCを持っている人は少ないし、通信料は高くスピードがメチャメチャ遅いものでした。携帯電話も通話しかできません。株を買うには証券会社の店頭か、営業さんに家まで来てもらって、口座を作り、店頭か電話で売買を依頼するしか方法はありませんでした。

 入門書の「証券会社の選び方」の項目に、「最初に口座を作るなら、大手証券会社がおすすめ」と書いてあったので、大学への通学時に寄りやすい名古屋駅の四大証券会社(野村、大和、日興、山一)のどれかに口座を作ろうと、店舗を訪問しました。

 まず野村に行きましたが、私が若くて資金も少ないせいか対応が冷たく、この時点で心が折れかけました。

 それでも初志貫徹して3社を訪問します。すると、大和と山一は50万円しか持っていない20歳の若造に、お茶を出してくれて親切に説明してくれました。2社のうち、より駅に近くて入りやすい雰囲気だった大和証券に口座を作ることにしました。

 お金を入金したものの、何を買っていいかがわかりません。ネットもない当時の情報源は、証券会社の店頭で窓口のお姉さんにもらったチャートやバリュエーションが書かれている紙だけ(じつは当時も、『会社四季報』や『週刊ゴールデンチャート』があり、官報販売所で有価証券報告書なども販売していましたが、その知識すらなかったのです)。

 1銘柄をたくさん買うのはとても怖くて、「ミニ株」という0.1単元ずつの単元未満株を買えて、手数料も3000円のサービスを利用しました。

 最初に買った銘柄は、東芝、富士通、パラマウントベッド、モスフードサービスの4つです。東芝と富士通は店頭の大きな紙に「今月の推奨株」として8銘柄ほど書かれていたなかから将来性を考えて選び、パラマウントベッドは親切に対応してくれた窓口のお姉さんがおすすめしてくれた銘柄でした(笑)。モスフードサービスはモスバーガーが好きだったので優待が欲しくて買いました(ミニ株だからまだ優待はもらえませんでした)。