高市政権が11月21日に閣議決定した21.3兆円規模の総合経済対策が、市場に大きな波紋を広げている。第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏は「金利上昇リスクもあるので恐ろしい」と強い懸念を表明。平時では「ほとんど例がない」規模の財政出動が、皮肉にも円安を加速させる構造的な問題を抱えていると分析する。(全2回の2回目/はじめから読む)
(初出:「文藝春秋PLUS」2025年11月29日配信)
大規模財政出動の“副作用”とは
熊野氏が特に警戒するのは、一般会計への跳ね返りだ。「一般会計で17.7兆円と言われるが、ガソリン税や年収の壁対応で2.7兆円ほど穴は開くので、合計すると20兆円」(補正予算では21.3兆円)になる計算だ。税収増加は頑張っても2兆円くらい」で、「20兆から相当に減らさないと新規国債発行額の増加になる」(補正予算では11.7兆円)。
その結果、「一時1.8%になった長期金利がさらに上がる」リスクが高まる(12月半ばは2.0%へ接近)。熊野氏は「10年超の超長期も金利が跳ね上がったり下がったり乱高下を繰り返すかもしれない」と予測。大規模財政出動の副作用として「金利上昇と円安」が進むという構造的問題を指摘した。
「ブラックボックス」な7兆円の危機管理投資
特に問題視されるのが、約7兆円の危機管理投資・成長投資の中身だ。熊野氏は政府からブリーフィングを受けた関係者の話として「ここは実はブラックボックス」だと明かす。高市首相は「供給力強化」と説明するが、実際には「需要の増加になるのでインフレ圧力」となり、「国内で調達できないものは海外に依存するので貿易赤字を拡大させる」という。
その結果、「ドルで支払うからドルを買って円を売る円安要因になる」。さらに基金として積み立てる部分は「すぐに出てこないので国債発行という形で資金調達では需給を逼迫させるが、経済にはプラス効果は当面ない」。つまり「副作用が多く、効くメリットが小さい」構造だという。

