文春オンライン

おかずがクネクネ 絵本界の「奇才」岡田よしたかが明かすデビューまでの数奇な人生

絵本作家・岡田よしたかインタビュー #2

note

シュールで言えばマグリットが好きなんです

――「全日本オールヌードマラソン」の画風は今と変わらない感じなんですか?

岡田 ええ。大学の卒業制作も「哀愁のお風呂」「狂熱のタコ金魚の謎」っていう2作品だったんですけど、教授陣の評判は悪かったなあ。おっさんの入浴を魚屋のおっさんが覗いてるって絵なんですけどね。大学では真面目に油絵を学んでたんですけど、途中からそういう方向に走り始めてしまって、どんどん教授の評価が下がってった(笑)。卒業制作の展覧会も、会場の隅っこに追いやられてました。でも、僕の作品に結構人が集まって、にぎやかでしたけど。

「全日本オールヌードマラソン」

――一言でくくれませんけど、岡田さんの作風、画風はシュールレアリスムを思わせるような気がしてまして。『ぼくらはうまいもんフライヤーズ』に出てくるイカリングのねじれ具合とか、ダリの画を思い出しました。

ADVERTISEMENT

岡田 ああ、僕はダリそんなに好きではないですけど、シュールで言えばマグリットが好きなんです。ルネ・マグリット。ベルギーの画家で、暖炉から機関車が出てくるような画とか、変わったモチーフで描き続けた人。でも、マグリットより好きなのは、僕の好きな絵本作家・片山健さんの絵だし、水木しげるさん、つげ義春さんの絵も好き。

 

――大人になってから好きになった絵本って、どんな作品ですか?

岡田 ウクライナ民話の『てぶくろ』。長新太さんの『ながいながいすべりだい』。片山健さんの「コッコさんシリーズ」。大好きですね。大人の絵本の楽しみ方って、たまに聞かれるんですけど、僕は何も考えず、面白かったら面白いでええんちゃうかなと思ってます。楽しみ方は人それぞれですけど、子どもと同じように、おもろかったら、「ああ、おもろいなあ」だけでいいと思っていて。

次はさくらもち。女の子が主人公、初めてですわ

――物語を作るうえで影響を受けた作家などはいますか?

岡田 それはないですけど、好きなのは筒井康隆さんですね。感覚的なところでは影響を受けたなって思ってます。本棚から筒井さんの古い文庫が出てきたから、今も読んでますよ。

 

――今、準備中の作品はどんなものなんですか?

岡田 おにぎりが主人公のものと、鍋をつつく人々の話は描き終えたところです。今ちょうど描いているのが『さくらもちのさくらこさん』。女の子が主人公なの、初めてですわ。それから、大根の話が出版される予定です。嫁さんが畑で採れた大根を、水を張ったタライにぎゅうぎゅうに漬けてたんです。それ見てて大根が「ああ、しんどいわ」ってボヤいてるのが聞こえた(笑)。「これや」と。たまにそういう啓示に出会いますね、ものを見ていると。大根の絵本ですか? ブリ大根の季節に出るはずですよ。

 

写真=荻原伴彦

おかだ・よしたか/1956年、大阪府生まれ。80年、愛知県立芸術大学油画科卒業。91年、初の画集を自費出版。1998年、『大きなポケット』に発表した「あやまりたおす人々」で絵本作家デビュー。以降、『ちくわのわーさん』『うどんのうーやん』『こんぶのぶーさん』『ぼくらはうまいもんフライヤーズ』など食べ物を主人公にした作品を多数生み出し続けている。

おかずがクネクネ 絵本界の「奇才」岡田よしたかが明かすデビューまでの数奇な人生

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー