「日本の女優のデータを10人分提供してほしい」
かさい 「なんでそんなことやっているの?」とはよく言われます(笑)。私自身がこの業界に育ててもらったし、落ち込んでいた時に助けてもらった恩があるからというのが理由の一つでしょうか。
誰かが間に入らないと、本当に潰れてしまう子がいるんです。だから、私が理事を務めている「映像実演者協議会」の弁護士につないだり、現役のときに立ち上げた「フリー女優連盟」というコミュニティで、事務所に属さない子たちが情報を共有できる場所を運営したり。苦しんでいる女の子を放っておけないじゃないですか。
――苦しむ女の子を救うという意味では「AV新法」の存在が頭に浮かびました。施行から3年が経ちましたが、現場の状況は変わりましたか?
かさい 正直、課題は山積みです。法律ができたことで業界に属している女性が守られるケースは増えましたが、一方で地下化の問題が深刻化している側面はありますよね。
――地下化といいますと?
かさい もともと懸念されていたように、海外売春や無修正ライブチャットへの勧誘が横行したり、個人間での撮影を流出させられたりですね。摘発自体は増えていますが、現場の実情に即した改正がもっと必要だと感じています(*1)。
*1 映像実演者協議会にアドバイスや提言を行う第三者組織「実演者地位向上委員会」委員で、京都大学教授の刑法学者髙山佳奈子氏は、「AV新法下では出演決定から収入を得るまで最低でも約半年を要するため、経済的に困窮した人が即金性を求めて『地下』へ誘導されることは予見された問題だった」と指摘する。 その上で、「日本国内から視聴可能な場合、理論上は海外サイトであっても日本の法律を適用できるが、サーバーや証拠が海外にある場合、捜査や訴追のハードルが格段に上がるのが実情だ」と解説する。
――さらに最近は、AI技術による新たな問題も起きているそうですね。
かさい はい。この間、中国の業者から連絡が来たんですよ。「15億円かけてリアルなAI生成ポルノを作れるアプリを開発している。顔の学習データとして、日本の女優のデータを10人分提供してほしい」って。
――データ提供ですか。
かさい 「1人につき10万円払うから」って言われました。値段の問題ではないですが、安すぎますよね(笑)。
しかも、「このデータを使えば、本人が出演しなくても無限にAVが作れる。売り上げの何%かは還元するから、君たちは寝てても儲かるよ」みたいな理屈で。
もちろん、私は断固拒否しました。
