「首やら上半身やらも骨になっていました」
そのまま署に向かって移動していたところ、少し経って先ほどの検視責任者から電話が入りました。
「思ったよりも、首やら上半身やらも骨になっていました。そのまま署に持ってきたので、骨の回収はできています」
「そう、骨が全て回収できているならよかった」
「……」
なんだか奥歯に物が挟まったような感じです。
「まだありまして……発見者も近隣住民もいい人たちなんですよ……。ただ……検視を始めてみたら遺体の首付近にタオルが巻かれていました」
「……なぜ現場を出る前に気づかないのよ?」
どうやら骨の回収に精一杯で、服の襟の下にあったタオルに気づかなかったようです。「首にタオル」と聞いてどう思うでしょうか。暑いので汗を拭くためにタオルを首に巻いていたとも考えられますが、警察官は首をタオルで絞められたのではないか? と考えてしまうのです。
「……もう少しで署に着くから、遺体はそのままにして待ってて」
急いで駆けつけ、途中で止めていた検視を再開しました。首にはタオルが緩く巻かれています。服の襟の下に入れ込んであるし、首を絞めたようには考えにくい状況です。首周辺は確かに骨になっていますが、甲状軟骨と舌骨の骨折はなさそうです。
現場の状況を聞くとアパートの1階であり、掃き出し窓は数年前から全開で部屋の外までゴミが溢れていたとのこと。それでは誰でも出入り自由です。どうして骨になるほどまで気づかれなかったのか……。貴重品などもゴミが多すぎて見つからないままとのことです。結局、事件性が払拭できず解剖に付すことにしました。