「結構腐敗が進んでいて、顔面はかなり骨なんですよね」「首やら上半身やらも骨になっていました」
何日も窓が開けっぱなしで、洗濯物を干したままという不審な部屋を大家が訪問して発見したのは、一部が白骨化した遺体だった。その現場を訪問した検視官が見たものとは?
医師の診療管理下にない状況で死亡した遺体と向き合い、事件性の有無などを判断する役割を担う仕事・検視官として、これまで約1600体の遺体と向き合ってきた経験がある山形真紀氏が『検視官の現場 遺体が語る多死社会・日本のリアル』(中央公論新社)を上梓した。今回は、同書から真夏のゴミ屋敷で腐敗した遺体のケースをお届けしていく。(全2回の2回目/最初から読む)
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解剖の指示をした後、私たちも死者の部屋に向かいました。玄関を開けると大量のゴミが崩れてしまうため、全開になっている掃き出し窓から入るしかなさそうです。
部屋の中はいわゆるゴミ屋敷です。弁当やカップラーメンの食べ残しや空のペットボトルなどの生活ゴミだけでなく、汚れた衣類や埃にまみれた生活雑貨なども合わせて、高いところでは1メートル程度まで積み上がり、床が見える場所はなく足の踏み場もありません。
そのなかで居間らしき部屋の壁沿いに1メートル四方ほどゴミの堆積が少ない空間があり、そこで死者が発見されたとのことです。室内には無数のハエが飛び交い、天井からぶら下がっているハエ取り紙には多くのハエが付着しています。ハエの死骸やウジも多く、ゴキブリもゴソゴソ行き交っています。掃き出し窓はゴミが溢れ出してずっと全開状態なので、ネズミなどの小動物も自由に入れるでしょう。
死亡時期は目撃状況などから約1ヶ月前のようです。1ヶ月での一部白骨化は早い気もしますが、まだまだ外は暑く、窓が開けっぱなしで室温も高いため腐敗の進行が早かったとも考えられますし、白骨化している箇所の骨の表面の様子からは、屋外から入って来た虫やネズミなどの小動物が食い荒らした仕業とも考えられます。
遺体があった付近には数百匹のウジが蠢いているので、これも白骨化を早めた一因かもしれません。発見が遅れたのは、いつも窓が全開で臭いがこもらなかったためのようです。
