2024年に過去最多となる160万人超の死者を数える「多死社会」の日本。多くの人が亡くなるうち、医師の診療管理下にない状況で死亡した遺体と向き合っている人たちがいる。各道府県警察に所属しており、事件性の有無などを判断する「検視官」と呼ばれる警察官だ。

 そんな検視官として、これまで約1600体の遺体と向き合ってきた経験がある山形真紀氏が『検視官の現場 遺体が語る多死社会・日本のリアル』(中央公論新社)を上梓した。

 腐敗遺体や浴槽内での変死、さらには自慰行為中に亡くなったと思われる遺体など、数多くのケースがまとまっている本書から「汽車っぴき」、いわゆる列車による轢死のケースをお届けする。頭蓋骨は割れて脳が露出、皮膚から骨が飛び出し、肉や内臓が飛び散る遺体を、いったいどのように捜査していくのか。(全2回の2回目/最初から読む)

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検視官は、どのように捜査を進めていくのか ©travelclock/イメージマート

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 汽車っぴきの現場で直腸内温度(直腸の温度)を測ることもあります。古い話になりますが、下山事件という国鉄3大ミステリー事件の1つと言われる事件があります。1949年、国鉄の下山定則総裁が常磐線の線路上で轢死体となって発見されますが、生体轢断(れきだん)か死後轢断かが争われ、結局、自殺か他殺か推定できないまま迷宮入りとなってしまいました。

 轢死体は損傷が激しいため、その損傷が生前の列車の轢過(れきか)によるもの(生体轢断)であり自殺なのか、あらかじめ誰かに暴行等を加えられ殺された後に列車に轢かせたもの(死後轢断)であり事件性が疑われるのか、外見から見分けることが難しいのです。

 そのような列車事故でカメラ映像もなく、深夜などで目撃状況もはっきりしない場合、自殺・他殺を推定する際に参考になるのが直腸内温度です。