多くの場合、自殺動機は「1つ」ではない

 理由もなく自殺する人はいないのですが、自殺するほどの想いをどの程度残していくかは人それぞれのようです。今回のケースは、どうやら職場で大きな仕事を任されたことによる疲れが大きいようですが、夫婦間の誤解やすれ違いも垣間見えました。

 大抵の人は1つの動機ではなく、健康問題、金銭問題、人間関係などに関する複数の苦悩が積み重なって自殺に至るようです。また、精神的な疾患を抱えていることもあります。自殺動機は複合的でなかなか絞りきれませんが、死者の主な悩みを生前の言動や遺書などから警察が推定するしかありません。

 自殺者の家族の落胆はことのほか大きいものです。自殺を仄めかすようなやりとりがあって心配して夜も眠れないところに、警察からの連絡が来るのです。そのような家族に対し、事件性の有無や自殺動機を調べるため、話を聞かなくてはなりません。

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 自殺動機の捜査では、死者のこれまでの人生や死へ向かう想いを追体験することになります。さまざまな苦悩を抱えてこの世を離れる道を選んだのなら、せめて安らかに――。頭蓋骨内に沈みかけた眼球をそっと戻して顔を整え、静かに目を合わせながら、そう願わずにはいられません。

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