事件性の有無は……?

 解剖の結果、事件性は認められませんでした。1ヶ月でこのように骨になるのかと問うと、解剖医も「これはレアケースだと思うよ。普通に見れば半年以上経過した遺体と考えます。でも、窓が全開でウジや昆虫類も多くいたという現場の状況を聞くと、環境が白骨化に大きく影響したと考えられ、死後1ヶ月以内の遺体と考えても矛盾しないでしょう」と明快に答えてくれました。警察の見立てと一致しており一安心です。

 時折、このようなゴミ屋敷の中で発見される遺体があります。ゴミの山の中でどうやって生活しているのでしょう。大量とはいえ大半は生活ゴミで、時間をかけて誰かに手伝ってもらえばゴミの処分もできなくはなさそうです。ただ環境捜査を進めていくと、ゴミ屋敷の住人の多くは他人との関わりを拒否しています。

訪問した家は、一面がゴミで覆われていた 画像はイメージ ©beauty_box/イメージマート

 いわゆるセルフネグレクト状態の人も多く、ゴミで溢れた部屋からは生活意欲というか生きる気力が感じられません。たまに、大量の生活ゴミに覆い尽くされている部屋の隅に、十数年前の死者やその家族と思われる思い出の写真が飾られているような、なんだか不思議な空間に出くわすこともあります。古い写真の中で死者の時が止まり、ゴミだけが増えていったような悲しい空間です。

ADVERTISEMENT

 ハエの死骸やウジを踏みそうになりながら、遺体のあった場所に座り込んで周囲を見回してみると、視界は一面のゴミに覆われています。死者はそのなかに身を横たえ、何を思って最期を迎えたのでしょう。自分や社会に対して何かを諦めてしまったのか――ゴミの山の隙間を通して、その目に自らが住む日本の社会はどのように映っていたのでしょうか。

最初から記事を読む 「最後に死者と目が合いました」と証言する運転手も…列車事故現場で“残酷すぎる遺体”とも向き合う「検視官」の凄絶な仕事内容とは?