ChatGPTや画像生成AIを使うとき、ふと「これ、法律的に大丈夫なのかな?」と不安になったことはないだろうか。どのような利用であればセーフで、逆に何をやったらアウトなのか……。

 ここでは、STORIA法律事務所の弁護士柿沼太一氏が『AIの倫理』(栗原聡・編著/角川新書)に寄せた、AIと法律に関する論考の一部を抜粋。日本における著作権法の実情を紹介する。

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私たちの生活を変える生成AIと、忍び寄る法的リスク

 画像生成、文章作成、音楽生成、そして人間のような自然な会話。生成AI(ジェネレーティブAI)の進化は凄まじく、私たちの仕事や日常生活に大きな変化をもたらしつつある。しかし、その驚くべき能力の裏側には、著作権、プライバシー、そしてこれまで想定されていなかったような法的問題が潜んでいる。

 この記事では、生成AIを開発したり利用したりする際に、特に注意すべき法的な課題について、具体的な事例を交えながら、一般の読者にも分かりやすく解説していく。AIが生み出す未来は明るいものばかりではないかもしれないが、法的なリスクを正しく理解し、適切に対処することで、私たちはAI技術の恩恵をより安全に享受できるはずである。

©kimtoru/イメージマート

 本稿が、AIと賢く付き合っていくための一助となれば幸いである。なお、生成AIと著作権に関しては米国を中心に裁判も多数提起されており、まだまだ議論の途中である。本稿の内容は、執筆時点(25年11月)での筆者の意見をまとめたものであることに留意されたい。

生成AIは著作権の無法地帯?――学習データと生成物の法的課題

 生成AIは、インターネット上などに存在する膨大なデータ(文章、画像、音声など)を「学習」することで、新たなコンテンツを「生成」する。この「学習」と「生成」のプロセスにおいて、著作権はどのように関わってくるのだろうか。

(1)web上のどんなデータでAIを学習させても大丈夫?

事例:Web上の様々なデータやデータセットを大規模に集めて学習用のデータセットを作り、それを使って生成AIモデルを開発した。後になって、学習に使ったデータの一部に、海賊版サイト上の著作物が含まれていたことが分かった。このままAIモデルを公開し続けても問題ないだろうか。

 結論から言うと、日本の著作権法の下では、AI開発者がたとえ海賊版と知りながら、あるいは後から知ったとしても、そのデータをAIの学習に利用する行為自体は、原則として著作権侵害にはならない。これは、日本の著作権法第30条の4という規定によるものである。この条文は、AI開発のような「情報解析」の目的であれば、著作物を原則自由に利用できると定めており、学習データが適法に入手されたものであることまでは求めていない。これは、諸外国の法律と比較しても、日本の特徴的な点である。

 ただし、これにはいくつかの重要な注意点がある。