「恋愛でいいんじゃないの?」と言うから、「名前を変えることが大事なんだ」と押し掛けた(笑)

吉永 向こうは、かわいいなとは思ってくれたみたいなんだけど、困ったんでしょう。彼は、女優の夫がディレクターだというのはよくないという考えだったから。このことについては、だいぶ後になって私に話してくれたんだけどね。それにバツイチだったからもう結婚はしないつもりだったし。でもこのままでは私がダメになると思ったから押しまくったの。太郎は「恋愛でいいんじゃないの?」と言うから、「名前を変えることが大事なんだ」と、半ば無理矢理に押し掛けた(笑)。

太郎さんと希林さんは会えば互いに「似てるねー」。若き内田也哉子を囲んでまるで家族写真。

内田 押し掛け女房だったんだ。

吉永 全くそうなのよ。

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内田 うちは結婚したときに本木(雅弘)が内田姓になったんですね。本木は母に「内田になってくれない?」と言われて「いいですよ」って軽くOKしたの。小百合さんはなぜ名前を変えることがそんなに大事だったの?

吉永 名前を変えることによって、背負っているものを一度捨てて、違う世界に入れるんじゃないかなって思ったから。

内田 実際に変わりました?

吉永 変わったわよ。岡田小百合になって、一人の人間としていろいろなところに行くようになった。銀行にはちゃんと通帳を持ってね。それまで人任せだったから、28歳にしてそんなこともできていなかったのね。

内田 だってスター「吉永小百合」ですもの。では、人生がそこからスタートを切れたという感じなのかな。

吉永 本当の意味のスタートね。人間としてのスタート。もし、声が出なくなったときに太郎に相談しなければ、「吉永小百合」のままどうしようもなくなって、この仕事を辞めていたと思う。

小学6年、デビュー作の『赤胴鈴之助』でアフレコ(左端)。ここからスター街道が始まった。©文藝春秋

何でも二人でやることが楽しかった

内田 小百合さんは太郎さんと出会う前に恋愛の経験があったということだけど、私は初恋の人と結婚したので天然記念物とか絶滅危惧種とか言われています。

吉永 あら、素敵よ。

内田 父は最初から家にいないし、男の兄弟もいないし、男性が家庭にいることがなかった。本木がどうのこうのということではなく、結婚して男性が家庭にいるようになったことがものすごいカルチャーショックで、なんだか馴染めなかった。小百合さんはお父様はいらっしゃるけど三人姉妹だったから、そんなカルチャーショックがあったんじゃない?

吉永 それはぜんぜんなくて、何でも二人でやることが楽しかった。

内田 ああ、小百合さんと太郎さんはいつも一緒だったなあ。旅に出かけるのも、ラグビー観戦も、スキーも一緒だったものね。