子どもを持たないという選択

吉永 10代の頃は、女の生き方を書いた長編、トルストイとか、モーパッサンとかよく読んでいたけれど、今読むのは自分の仕事に関係ある本だけよ。太郎と海に行くと、彼は海辺で本を読んでばかり、私は泳いでばかり(笑)。

内田 いいコンビだー(笑)。うちは本木と趣味が全く合わないの。映画一つ見ても、「ここで私は心が動いた」と言えば、「えー、そうかな」って言われる。「どうして?」ってお互いに掘り下げていくうちに最後はケンカになる。いよいよ破滅的になると本木が階下に住んでいた母を呼んで、「樹木さん、ちょっと聞いてください。あなたの娘がこういうことを言うんだけど、どう思いますか」って。

吉永 なかなかですね(笑)。希林さんは何て答えるの?

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内田 「あらァ、大変だねえ」とか、時には「私の育て方が悪かったんだね」とか。私と本木は、子育てという共同作業が発生していなかったら、夫婦としての存続は危なかった。「子はカスガイ」とはよく言ったものだと思います。でも小百合さんと太郎さんは、子どもがいなくてもずっと仲のいいご夫婦でした。立ち入ったことを伺いますが、小百合さんご夫婦の子どもを持たないという選択は、お二人の意志だったんですか?

吉永 太郎があまり欲しがらなかったこともあるし、私自身が自分の親との関係をいい形にできなかったということもあったから、二人で話し合って、子どもは持たないことにしようと決めたのよ。

写真:橋本篤

内田 小百合さんご自身の親との関係というと、ご両親は結婚に大反対だったと聞きました。太郎さんがご両親に恨まれていた時期もあったそうですね。

吉永 今考えれば、すべて私が悪かった。声が出なくなるほど悩んだとき、あるいはそうなるずっと前に自分にはこの仕事はできないと思ったとき、自分は今苦しいんだとか、これはやりたくないんだとか、正直に言えばよかったんだと思う。

内田 ぜんぜん言わなかったの?

吉永 親に対して私は「いい子」をやってしまった。何も言わずに親の望むとおりに振る舞っていたのに、ある日突然、「私、結婚する」と言って出て行ってしまった。歳を重ねていくうちにだんだん親の気持ちがわかるようになって、かわいそうなことしたな、ていねいに説明すべきだったなと思うようになりました。

※その後、話は岡田太郎さんの看病、最後に交わした会話へと移り……。記事全文は『週刊文春WOMAN2026創刊7周年記念号』で読むことができます。

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