冬の休暇には、暖かい家でじっくり映画を観たい。たまにはクラシックな名画で、輝くようなスターの魅力に浸ってみたい。そんなときに手元に置きたい芝山幹郎著『スターは楽し 映画で会いたい80人』(電子書籍)から、 伝説の喜劇役者フランキー堺の項を公開。 (全4回の3回目/4回目を読む)
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出てきただけで腹の皮がよじれる
『社長漫遊記』(一九六三)のウィリー田中。『社長外遊記』(一九六三)のジョージ・沖津。『社長千一夜』(一九六七)のペケロ・ドス・荒木(両者は名前に中黒が入る。奇妙だが放置しておく)。
一番笑ったのはどの人物だろうか。三人とも、フランキー堺が演じた日系三世の役だ。ウィリーはアメリカの塗料メーカーの極東支社長秘書だ。ジョージはハワイで雑貨屋を経営している。ペケロはブラジルで成功したコーヒー王の孫で、熊本に観光ホテルを建てたいらしい。
どれも怪しい。いかがわしい。だが、それ以上におかしい。出てきただけで腹の皮がよじれる。ガキのころから好きだったが、いま見直してもやはり笑い転げる。針の振り切れ方が飛び抜けている。
たとえばジョージの登場の仕方。旧知の森繁久彌が社長を務める丸急百貨店を訪れた彼は、「ハロー……ぼく沖津とおっしゃいましての……昨日ホノルルからいらっしゃいました」と名乗りをあげる。これだけでも吹き出してしまうが、ジョージには酒乱の気がある。接待を受けて奇声を発し、しゃっくりを連発し、座敷で大暴れするだけではない。二軒目のクラブではボンゴやコンガやドラムスを見事な腕前で叩きまくる。これはもう、本職がドラマーなのだから当たり前だろう。加えて、受けにまわるのが、森繁や三木のり平や加東大介といった名人ばかりだ。おかしくならないわけがない。ナンセンス爆弾は随所で炸裂する。

