「端的にいうと膵臓の萎縮です。がんというのは遺伝子の病気で、細胞の増殖を調節するKRAS遺伝子という遺伝子に変化が起こることで、正常な細胞がやがてがんになる細胞へと変異する。その変異が起こると膵臓の腺房細胞に萎縮が起こり、その萎縮して無くなった部分を脂肪組織が埋めていく。それが脂肪置換です」
菊山先生の説明だ。
「鷲田さんの場合は嚢胞が見つかり検査を受けて、脂肪置換が見つかった。嚢胞と脂肪置換とがどう関わっているかというと、嚢胞はKRAS遺伝子変異によって最初に起こる形の変化です。次の段階として萎縮が起こり脂肪置換ができる」
要は発がんに向けて一歩、進んだ状態になったということなのだ。
腺房細胞の萎縮を見つけることが、0期発見の第1歩
だから嚢胞の段階で定期的な精密検査を行い、腺房細胞の萎縮(脂肪置換)を見つけることが、0期発見の第1歩となる訳である。
ただひとことで膵臓嚢胞と言っても、様々な種類がある。その中で一般的にはほとんどの嚢胞はIPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)と診断され、治療ガイドラインに沿って1年に1回、MRI検査を行って経過観察をすることになる。
ところが菊山先生によると、嚢胞が形成される膵管拡張でIPMNは少数派で、貯留嚢胞と言われるものが多数を占めるのだという。この貯留嚢胞とは主膵管とそこから枝分かれしていく分枝膵管が交わるところに線維ができて、分岐膵管の出口が塞がれて膨らみ嚢胞が形成されるものだ。そして腺房細胞が萎縮してがん化を起こしてく過程で、この貯留嚢胞が作られることが判っている。
今は発がんに関わる1番のトピックと言える問題
この貯留嚢胞があれば、嚢胞の大きさに関わらず膵臓がん発生の危険性がある。だから嚢胞が見つかり、IPMNと診断された場合でも、経過観察で嚢胞の大きさの変化をチェックしただけでは、がん化のリスクを見逃す危険があるということだ。膵臓の萎縮があるかどうか、脂肪置換が形成されているかを見極めていかなければ0期での発見はできない。そこを見逃すと、見つかった時にはすでに浸潤がんとして膵管から膵臓内にがん細胞が広がっていることがほとんどなのだという。
「腺房細胞の萎縮による脂肪置換ができているかどうかが問題で、脂肪置換というものの怖さを世の中に知らしめることが僕らの仕事だと思っています」
菊山先生はこう力説する。
