「世捨て人になろうとしたんです」
──これまでに何度かホームレスをしていた理由は?
「社会復帰したくなかったんですよ」
──居場所がなくてホームレスになったわけではなく、社会復帰をしたくないから自らホームレスの道を選んだということ?
「自分から好きで、あんな生活をしていました。私の場合、都市型のホームレスではなく、山奥のホームレスですから。世捨て人になろうとしたんです」
──普通に仕事をすることはできなかったんですか?
「能力的には普通ですよ。IQ的には。性格的な問題ですね」
嚙み合わないところもあるが、小島は、どこか頭の良さを感じさせる。性格的な問題というのは、発達障害のことだろう。それにしても、“山奥で生活する世捨て人”を、ホームレスと呼ぶだろうか? 山ごもり、自由人、旅人、そういうイメージのほうが強い気がする。私は、わずかな引っ掛かりを感じたが、ここは流すことにした。
──障害者手帳3級を持っていると言っていたけど、どういう病気なんですか?
「ADHD(注意欠如多動症)です」
──ADHDで精神科に入院していたんですか?
「私の場合は任意入院なので、入りたいから入ったんですよ。平成29年の1月と8月にそれぞれ2カ月ほど。精神病院は、刑務所の代償行為ですね。一生ここにいたいと思いました。他の入院患者は強制的に入れられた人ばかりだから、『頭おかしいなぁ』と言われていましたね」
小島はそう言うと、笑みを浮かべた。
「病院では、刑務所の労務作業の代償行為として、昼間はずっと折り紙を折っていたんですよ」
──それは頼まれたのではなく、自主的に?
「はい。仕事の代わりに、折り紙を折って子どもにあげていました。6面体のボールを折ったり、12面体、56面体、72面体。144面体はパーツ自体が特殊なものになるんです。他にも紙8枚で作る皿とか、皿2枚を合わせてフリスビーにしたり。子どもは3日くらいですぐ壊しちゃうからいくらでも折れるんです。楽しかったですよ。子どもたちも喜んでいましたし。刑務所に入ったら、封筒を折ったりする作業をしたいですね」
──そんなにたくさんの子どもが精神科に入院しているの?
「ADHDで入院しています。第一病棟が成人患者で、第二病棟が老人と子ども。院内外出できる患者は、病棟が違っても交わることができるんです。病院内はイジメが酷くて、よく私が間に入って止めていました。ボコボコにされても病院は責任を取らないですからね。なんでも自力救済なんです。だから患者同士で団結するしかない。子どもなのに盗みをする奴もいて、私もスマホを盗まれました。盗みをするからイジメられていて、みんなが『こいつは何々をした』って紙に書いて壁に張り出すんです。ただ、私は彼を庇っていました」
──その精神科では、子どもに優しかったということ?
「そうですね」
目の前の小島が、精神科で子どもたちと仲良くしている光景はなかなか想像しづらかった。彼はこれまで、社会の隅に追いやられた人間ばかりと接してきたのかもしれない。そのことが極端な思想へと繫がったのだろうか。