2018年6月、東海道新幹線で起きた無差別殺傷事件。犯人の小島一朗は、逮捕直後から不可解な言動を繰り返し、世間の注目を集めた。同氏は、小学2年生の頃から「刑務所に入りたかった」というが、そうした願望はなぜ生まれたのか。
ここでは、写真家、文筆家のインベカヲリ★氏による『家族不適応殺 新幹線無差別殺傷犯、小島一朗の実像』(角川新書)の一部を抜粋。小島との面会記録から、その知られざる内面に迫る。
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笑顔の殺人犯
「〇番さんどうぞ」
ようやく番号が呼ばれ、私は席を立った。その日は人が少ないため、面会時間は最長の30分。常に混雑している東京拘置所が15分なのに比べると、だいぶ長い。
「どうぞ。3番ドアに入ってください」
薄暗い廊下の奥へ進み、番号の付いた金属ドアを開けた。
アクリル板の向こうには、まだ誰もいない。
面会室は狭く、スペースはそれぞれ一畳ほど。正面に肘が置ける程度の小さな台と、私の側には椅子が3つ無理矢理に押し込まれている。換気は悪く、壁はシミだらけだ。閉所恐怖症の私は、落ち着かない気分になった。
それでも椅子に座り、ノートを広げてスタンバイする。
しばらくすると、足音が聞こえてきた。ドアの向こうで「メガネがない」という声が聞こえる。すぐに扉がガチャッと開き、立会人の看守とともに小柄な男が入ってきた。
小島はメガネをかけていなかった。酷い近視なのか、目を細めてこちらを見ている。逮捕時の報道写真では子どもっぽい丸顔だったが、ハンガーストライキで瘦せたせいか、少し面長に見えた。頭は坊主で、太い眉毛に肌荒れが目立つ。着ているモスグリーンのシャツは、サイズが少し小さそうだ。
そして、小島はなぜかニコニコしていた。
「はじめまして、小島一朗です。このたびは面会に来ていただきありがとうございます。本の差し入れも、ありがとうございました」
丁寧すぎる挨拶をし、そして着席した。
普通の青年だ。なかなか面会したがらなかったので、てっきり人見知りかと思ったら、そうでもない様子である。
──こちらこそ、今日はありがとうございます。色々質問していいですか?
「どうぞ」
小島は、まっすぐにこちらを見て平然と言った。質問を待つ態度で来られると、私のほうが緊張する。
──『むしゃくしゃした出来事』を読ませていただきましたけど、そもそもこの出来事の前から、「刑務所に入りたい」という気持ちが先にあったんですよね?
「そうです」
──子どもの頃から少年院に入りたかったというのは、家に居場所がないから?
「あんな家にいたくないからです。小学校2年生のとき、学校で書いた日記で、『刑務所に入りたい』と書いています」
──逃げ場としての少年院?
「そうですね」
