──拘置所に本をいっぱい持ち込んでいるようだけど、逮捕時から持ってたんですか?

「ホームレス中は、家から持ってきたものが10冊ありましたけど、犯行前夜に全部捨てました。本の影響で事件を起こしたと思われたくなかったから。逮捕時は現金が12万円残っていたので、弁護士さんに頼んで120冊分の本を購入してもらいました。まだ本を入れるスペースはあるけど、今はもうお金がないので買えません」

──その10冊の本のタイトルというのは?

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「それは言えません」

 小島は当たり前のように黙秘した。よほど本が好きなのだろう。拘置所ではやることがないため、読書をするには困らないはずだ。

「刑務所で一生保護室に入っているのもいいなと思いました」

──手紙に、「私は没落を欲していて、ただきっかけだけを待ち望んでいる」と書いていたけど、刑務所=没落、刑務所=幸福、つまり没落が幸福という意味なんですか?

「太陽が没落するとき、自分が立っている地上の反対を太陽は照らしに行く。ということは、没落すると反対が照るということなので、そう悪い意味ではないんです。でも私は遣い方を間違っていたかもしれない。ハンストしていた2週間は、保護室に入っていたんですよ。その間、ずっと結跏趺坐をして瞑想していたんです」

 小島は小田原拘置支所で、枚数超過した手紙を送ることを許可させるためにハンガーストライキを行っていた。あげく、暴れた者などを隔離する保護室に収容された。そこで、起床から就寝まで結跏趺坐で瞑想を続け、食事が届けられると「お供え物は香だけで十分」と断り、朝食も昼食も夕食も、食べることを拒否していたという。ハンストというより、まるで修行だ。

写真はイメージ ©AFLO

 奇妙なことを言っているにもかかわらず、小島の表情は変わらず笑みを浮かべたままだった。

──それは自主的に?

「はい。刑務所で一生保護室に入っているのもいいなと思いました」

──問題を起こさないと入れないんでしょ?

「刑務所では大声を出したり、物をぶっ壊すと、保護室に入ります。刑事収容施設法第79条、刑務官の制止に従わず、大声又は騒音を発するとき、他人に危害を加えるおそれがあるとき、刑事施設の設備、器具その他の物を損壊し、又は汚損するおそれがあるとき、その者を保護室に収容することができる、とありますので」

 条文をすらすら言うので、私は固まってしまった。まさか暗記しているとは。

 突然、終了のベルが鳴り響き、ここで面会は呆気なく終わった。小島は立ち上がると、お礼を言い、看守とともに出ていった。

 小島はいかにも余裕を見せていたが、あれは恐らく演技だろう。あらかじめ用意した答えを喋っているだけで、隙を与えようとしない。取り繕っているが、不信感を持っているのは明らかだった。

 拘置所を出ると来た道を戻らず、そのまま施設の周りをグルッと回る形で反対側を駅に向かって歩いた。途中に、差し入れ屋の「あさのや」があるからだ。食べ物や物品の差し入れは、この店で購入することになる。商品名が壁に書いて貼ってあるだけの奇妙な作りで、知らない人が見たら何の店かわからないだろう。私はここで適当なお菓子をいくつか頼んで会計した。

次の記事に続く 「おばあちゃんの話は全部ウソ」「母は言い訳をして逃げている」…“複雑すぎる家庭環境”を明かす無期懲役囚が放った“戦慄の一言”

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