ご存じのとおり、齋藤潤は映画『カラオケ行こ!』や『からかい上手の高木さん』(ともに24年公開)などで注目を集める、今もっとも勢いのある若手俳優のひとりだ。

「じつは以前から『声優のお仕事をしてみたい』と、いろんなところで話していたんです。でも、まさか本当に叶うなんて!」

齋藤潤 撮影=榎本麻美/文藝春秋

作品世界の“リズム”に乗って演じる

 そんな齋藤が初めて挑戦する劇場アニメーション『迷宮のしおり』は、「マクロス」シリーズや「アクエリオン」シリーズなど、音楽とメカアクションを融合させた独自の世界観で知られる河森正治監督によるオリジナル作品だ。

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「事前に拝見した映像には、一部すでに音楽が入っていたんです。そのおかげもあってか、河森監督が描く世界全体に“リズム”のようなものが感じられました。僕も、そのリズムにのって演技をすればいいんだ、と思って、できるだけ体を使いながら演じました」

©「迷宮のしおり」製作委員会

 そう語る齋藤には、河森監督からもらった忘れられない言葉があるという。

「初めてお会いしたときに『山田というキャラクターを演じられるのは、齋藤くんしかいない』と言ってくださったんです。そんなふうに見ていただけていたなんて、恐れ多かったですが、本当にうれしかったです」

 齋藤が演じる山田は、引っ込み思案な主人公・栞の幼なじみ。普段は明るくお調子者だが、密かに栞に想いを寄せる高校生だ。ある日、栞はスマホの画面が割れたことをきっかけに、謎の世界に閉じ込められてしまう――。現実世界に現れた奔放な“SHIORI”は栞ではない、という奇想天外なSOSに応え、山田は奔走する。

「山田は同年代とはいえ、自分よりも少年っぽさがあふれるキャラクターで、裏表のない人間です。明るくてお調子者だけど、気持ちがまっすぐなところが自然と出てしまう。だからこそ栞ちゃんに対しては、正直な言葉を口にするのが少し照れくさいというか、恥ずかしい気持ちが先に立ってしまう、とっても愛おしいキャラクターなんです。だからその愛おしさも包み隠さず演じようと心がけました」