現在、中山馬主協会のウィナーズレディとして活動している姫野みなみさん。中山競馬場や東京競馬場のパドックやウイナーズ・サークルでは「競馬場の華」として活躍する一方で、当初は「本当は競馬なんか興味ないんだろ」といった目を向けられることもあったという。
それでも彼女の“競馬愛”は強く、引退馬の支援活動を行う中で、2021年には24歳で引退馬の馬主になっている。スポットライトが当たる競馬場とはかけ離れた、競馬界の影の部分になぜ目を向けるようになったのか。(全2回の2回目/最初から読む)
引退馬の馬主になろうと思った理由
――引退馬に興味を持ったきっかけを教えてください。
姫野みなみさん(以下、姫野) もともと乗馬をやっていたときから、競走馬を引退した馬が乗馬になると見聞きしていたので、引退馬の余生については、ぼんやりとは知っていました。でも、あらためて考えてみると「引退馬はどこに行くんだろう」と疑問だったんですね。
――引退馬の行方は、どのように知りましたか?
姫野 私が馬好きであることをSNSで発信していたところ、2021年頃にファンの方から「こういうのがあるよ」とドキュメンタリー映画『今日もどこかで馬は生まれる』(2019年公開)を教えてもらいました。また、『サラブレッドはどこへ行くのか 「引退馬」から見る日本競馬』(平林健一/NHK出版新書)という本を読み、引退馬の大半は幸せな余生を過ごせない現実を知りました。
――姫野さんは競馬の魅力を「美しい物語」と言いましたが、この“暗黙の了解”は、その美しさとは対極にある部分だと思います。
姫野 ショッキングですよね。一般的なメディアでは、あまりそこに触れることはありません。その後、新潟県に養老牧場(引退馬が余生を過ごす牧場)があることを知り、連絡を取らせてもらいました。それが松原ステーブルスという牧場です。もともと新潟県競馬で騎手・調教師をされていた松原正文さんが、馬が好きで引退後の施設を作ろうとはじめたそうです。
――牧場の方の反応はいかがでしたか?
姫野 最初は怪訝な顔をされたように感じました。その場限りのバズを狙ったインフルエンサーもいるから、牧場側の反応もわかるんですけどね。それに馬主になっても預託料を支払えず、途中で放棄する人も多いようです。ですが、私が預託料を滞りなく振り込み続け、5年近く通ってお手伝いさせてもらう中で、関係性はより強いものになりました。
――中央競馬(JRA)の場合、競走馬の預託料は月70万円程度と聞きます。引退馬の場合、どれくらいの費用がかかるのですか?
姫野 馬にもよりますが、毎月の預託料は10万円前後です。引き取る際には、とくにお金はかかりません。でも「ひとりで1頭まるまる引き取る」というのは、養老牧場のなかでも少ないですね。共同で寄付するかたちが多いです。その場合だと、多くても月1万円くらいでしょうか。
