コンビニの陳列棚を巡る権謀術数
オープン価格帯の〈ごつ盛り ソース焼そば〉はコンビニで売られていない。それだけでなく東洋水産の〈マルちゃん〉ブランドのカップ焼きそば自体、──北海道〈やきそば弁当〉と東北・信越〈バゴォーン〉は例外として――コンビニで見かけることはまずない。
大手コンビニのカップ焼きそばコーナーは陳列スペースが限られており、品揃えはどうしてもロングセラーの定番商品が主体になる。全国的には〈U.F.O.〉〈ペヤング〉〈一平ちゃん〉の3銘柄と、その大判が基本形だ。あとは各メーカーのスポット商品数品が入れ替わる。〈マルちゃん〉ブランドのカップ焼きそばは、時折そこに混ざるくらいでしかない。
ただ〈マルちゃん〉ブランドはなくても、東洋水産のカップ焼きそばは存在している。実はセブンイレブンとファミリーマートのプライベート・ブランド(以下、PB)、「セブンプレミアム」や「ファミマル」のカップ焼きそばを、東洋水産が製造しているのだ。
コンビニの陳列棚は、どのジャンルでも激しいシェア争いが行われている。その戦場に標準価格帯のナショナル・ブランド(以下、NB)で新規参入し、先行するロングセラー・定番商品と直接対峙するのはどう考えても分が悪い。一方、PBの供給を受託した場合、発注を受けて製造した分は返品されないため、確実な売上げにつながる。また先行する競合他社のコンビニでのシェア拡大にブレーキをかける効果もある。
ノウハウの流出や自社NBとの競合、あるいはジャンル自体の平均販売価格の低下を招くなど、PBの受注生産はマイナス面が注目されがちだ。そのため余り有名ではないメーカーが請け負う事が多い。しかしメリットがデメリットを上回るケースもある。カップ焼きそば市場における東洋水産の場合は、メリットの方が大きいという経営判断があったのだろう。ちなみに大手では、明星食品もPBのカップ焼きそば製造を何社か受託している。
東洋水産はセブンイレブンとファミリーマートだけでなく、流通系PBのカップ焼きそばもいくつか製造している。
正確な数字を追うのは不可能だろうが、〈やきそば弁当〉〈バゴォーン〉〈ごつ盛り〉などのNB商品だけでなく、それらPB商品群も含めて考えた場合、もしかしたらカップ焼きそば市場での総生産量・総売上高のシェアは、東洋水産が業界トップかもしれない。
カップ焼きそばのシェアが話題に上がると、〈U.F.O.〉〈ペヤング〉〈一平ちゃん〉に注目が集まりがちだ。東洋水産=〈マルちゃん〉ブランドのカップ焼きそばについては、北海道や東北・信越など地域限定での人気の高さにのみ触れて終わることが多い。しかし実態を掘り下げてみると、東洋水産はオープン価格帯や各社PBの製造など、消費者の目に止まりにくい販路を通じて、想像以上にカップ焼きそば市場のパイを確保していることがわかる。