稲葉の知人が明かす。

「あの物件には保険会社3社で計2億円程の保険金がかけられており、そのうちの1社から約5000万円が稲葉側に振り込まれている」

脱税で人生暗転した稲葉と、火災保険調査を担う“業界のエース”深町

 全国で放火と詐欺を繰り返してきた稲葉と深町とは、一体どんな人物なのか。

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 1968年、稲葉は静岡県伊東市で生まれた。高校を卒業後、地元の不動産会社に就職した稲葉は、数年後に親族が代表を務める不動産会社に転職。30代前半で社長を任されていた。

稲葉はゴルフ部だった(高校の卒業アルバムより)

 若手社長として順風満帆な人生を送っていたはずが、

「2003年、3年間にわたって約9000万円を脱税していた容疑で在宅起訴。翌年、懲役1年6カ月(執行猶予4年)の判決を受け、人生が暗転しました」(地元の不動産関係者)

 18年には“伊豆のドン”と言われた佃弘巳・元伊東市長らが逮捕された贈収賄事件に絡み、稲葉も収賄幇助容疑で逮捕されている。

「この事件でも懲役1年(執行猶予3年)の判決が東京地裁で下されており、地元では悪評ばかりが流れるようになった」(同前)

 いっぽうの深町は1971年生まれ。保険調査会社大手「損害保険リサーチ」に2023年まで調査員として在籍していた。

 保険業界関係者が語る。

「深町は精鋭揃いと言われる東京本社の調査部門に長く在籍し、火災保険調査を主に担っていました。社内で若手に調査手法を指導することもあり、“業界のエース”と呼ぶ声もあった」

送検される深町

 2人がタッグを組み、全国各地で放火による保険金詐欺事件を起こしていったのだ。捜査関係者が言う。

「稲葉が手ごろな古民家物件を探し出し、深町が火災の偽装を指南しつつ実際に火もつけていた。アシが付くのを避けるため2人は物件の所有者にならず、その都度“協力者”を変えて犯行を繰り返していたようだ」

 2人の犯行手口は一体どのようなものだったのか。

 最初に起きた火災は22年8月4日。ターゲットになったのは、岐阜県飛騨市の山間部にある、延べ床面積306平方メートルの木造2階建て家屋だった。

「火事が起きる3カ月程前、稲葉は11歳上の腹違いの兄であるA氏名義で物件を取得。約200万円で購入し、すぐさま建物と家財に限度額6500万円の共済をかけました」(前出・記者)