物件購入後の“偽装工作”

 購入後、しばらくは実際に居住するかのような“偽装工作”を近隣に対しておこなっていた。

 近隣住民が回想する。

「Aさんは、『夏ぐらいからここに住む予定です』と言って挨拶に来ました。自分で壁のペンキを塗り直したり、私の息子夫婦の家が近所に建ったときには、新築祝いで静岡の魚の干物を持ってきてくれました」

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 火事発生の2カ月程前には地元業者に、リフォーム工事の依頼までしていた。

 工事を請け負った業者が述懐する。

「古い床の上から新しい床を貼るという3、4日で終わる簡単な工事でした。7月頭に見積もりを出したのに、Aさんから『工事は8月1日以降にしてくれ』と言われたので、8月頭から工事を始めたんです。で、残り1日で工事は終わる予定だったんですが……」

 そのタイミングで火災が発生したのである。

 この業者は工事前後のAの言動に不審さを感じていたという。

「短期間で終わる工事なのに急に『静岡に帰る』と言って、私に鍵を預けて帰ってしまったんです。その上、火事が起きた後、『家のブレーカーを切って作業していたら火事にならなかったんじゃないか』などと言いがかりをつけて、火事の責任を私に押し付けようとしてきたんです」

炎に包まれる岐阜の民家

 結局、この火事は“原因不明”として処理がなされ、同じ年の10月、Aの口座に共済金が振り込まれた。

 その金額は、見舞金や片付け費用などを合わせて約7300万円。いとも簡単に共済金が支払われてしまったのである。

 前出の記者が言う。

「味を占めた稲葉らは、僅か22日後に紋別でも火事を起こし、5000万円の保険金を詐取しています」

 この火事が、今月12日に逮捕された前述の事件だ。

紋別の火災後、稲葉は近隣にお詫びに回っていたという

 2件あわせて1億2000万円余を荒稼ぎした、1年2カ月後――。3件目の火災が23年10月29日に岡山県美咲町で発生する。

「狙われたのは築100年を超える延べ床面積326平方メートルの古民家でした。稲葉の手下と思しき20代のB氏が突然『買いたい』と仲介の不動産屋に現れた。ところが、契約直前になってなぜかB氏の友人であるC氏が登場。結局、22年6月にC氏が自分の名義で65万円程を支払ったのです」(同前)

 しばらくすると岐阜の物件と同様、稲葉の兄であるAが住み始めたという。

 物件の管理を任されていた不動産業者が言う。