幼い少女が相次いで誘拐され殺害された事件で、宮崎勤元死刑囚の部屋には膨大な量のビデオテープがあったことから、「アニメ好きのロリコン」という文脈で報じられた(実際にはアニメは数本だったとされる)。その後、過激な暴力や性的な描写のあるマンガは、「有害図書」に指定され未成年への販売が禁止されるようになった。さらに、メディアの報道によって、オタク=ネクラ(暗い性格)=キモイ=ロリコンというネガティブなレッテルが貼られるようになる。

無修正同人誌“事件”で幕張メッセが使用中止に

 1990年冬に開催された「コミケ39」は1万3000サークル、参加者25万人で幕を閉じたが、主催者が警察から事情聴取される事態に。「コミケで無修正のマンガが何冊も売られていた」となんらかの形で警察に通報があった(もしくは同人誌が持ち込まれた)のだ。この経緯には諸説があり、筆者が聞いたのは「無修正同人誌を買った中学生が、帰りの電車賃がなくなり交番に駆け込んだ。その持ち物検査で見つかった」というものだが、事実かは不明だ。

幕張メッセ(写真:kawamura_lucy/イメージマート)

 この一件により、幕張メッセでのコミケ開催は中止となる。青少年健全育成条例を強く推進する千葉県の施設だけに、穏便に済ませるわけにはいかなかったようだ。

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 当時コミケでは、「わいせつ物頒布等罪」にあたるかどうかというのは修正の定義が曖昧かつ、サークルの判断任せになっていた。また、アニメの登場人物をモチーフにしたパロディ本についての著作権がらみもグレーゾーンだ。版元によっては、「2次創作物なので版権の問題なし」とするところから、「うちのキャラクターの品位を下げるようなことはさせん!」強硬なところ(近年はだいぶ柔らかくなった)もあり、混沌としていた。