わいせつ規制と海賊版の狭間で導入された「イエローカード」制
幕張メッセの使用中止事件を受け、翌年の1991年は晴海を全館(となりの東京国際貿易センターも)貸し切ったがキャパ不足で規模を縮小して開催。また有害図書や無修正、さらに同人誌が正しく一般に認知されていなかったため、警察がビニール本(無修正の違法な写真集)を摘発した店にあった同人誌も修正の有無によらず摘発されたり、海賊本(マンガをそのままコピーして販売)と勘違いされたりして、神保町の有名書店(絵のうまい作家さんの本が多いので、一般には本家のマンガをコピーしたように見える)や作家、印刷所(犯罪ほう助!)まで摘発されるなどもあった。著作権とわいせつ判断に関しては、今でも喧々諤々なのでここでは書かないが、答えは出ない問題だろう。
さてわいせつと著作権に振り回される中で開催された「コミケ40」は、現在に至るまで続く「イエローカード」制が導入される。開会前に頒布する見本誌を提出し、主催者が定めた修正レベルをクリアしているかのチェックだ。もし消しが甘いと「販売停止」と書かれたイエローカードが机に貼られ当該誌が頒布NGとなる。このレベルが厳しい! 実に厳しい! 最近では商業誌の消しの方が甘いのではないだろうか。
ただしこのチェックは修正レベルのみで、内容は精査されない。コミケ憲章として「表現の自由」がまずありきなので、死体や爆発物、薬物をモチーフにした本から、自作したアクセサリやゲーム用コントローラまで、法に触れない範囲で何でも頒布OKなのだ。
1996年の夏、「コミケ50」から開催地をビッグサイトに移す。1万8000サークル、参加者数35万人。冬はビッグサイト全館貸し切りになり巨大イベントになる。その後、さまざまなトラブルは発生するものの、これといった大きな事件が発生することなく、粛々とコミケは開催され続けている。
※コミケは同人誌の「即売会」ではありません。コミケの憲章では、無償配布や参加スペースを確保して一般参加者と会話を交わすだけでも構わないとしています。この記事では「販売品」や「売り子」「買い手」などとはせず、憲章に基づいて「頒布品」「サークル参加者(スペースを持っている)」「参加者(一般参加)」としています。

