AIには代替できない価値を生むGiver

 さらに言うと、AI時代にはあらゆる作業や情報が「抽象化」されていきます。AIがスピーディに処理したり答えを出せる領域が増えるほど、人間がやることは「具体」の部分――リアルな行動やその人ならではの属人性に仕事が集約されていきます。つまり「この人がやるから価値がある」と思ってもらうことが重要になる。

 普段から他者を応援している人は、今度は周りから自分も「推して」もらえるようになるんですね。「理由はよく分からないけれど、あの人が好きだから応援する」。そんな感情的な繋がりを生むのがGiverとしての資質であり、AIには代替できない価値となります。

──では具体的にGiverとしてどう行動したらよいでしょうか。日本人は相手に気を遣いすぎるあまり「動けない」という人も多そうです。

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 Giverになりきれない人は、しばしば損をすることや、うまくいかないかもしれないことを過度に恐れています。成功率100%を目指す必要はなく、むしろ失敗を「学び」に変換できる人が強い。

 サッカー選手のロベルト・バッジョの有名な言葉に「PKを外すことができるのは、PKを蹴る勇気を持つ者だけだ」というものがあります。ワールドカップの決勝でPKを外した彼だからこその響く言葉です。勇気をもって普段から与えていないと、どういう与え方が喜ばれるかも学べないですからね。

©AFLO

 それを踏まえたうえで、Giverとしての第一歩はまず「観察する」こと。興味と好奇心をもって周りの人をよく見る。例えば、誰と話しているときに機嫌がいいか、あるいは緊張しているのか、あるいはいまどんな仕事に取り組んでいるのかなどを把握するのです。人を観察するときは必ず「減点方式」ではなく「加点方式」で。その人の「周りへの貢献度の高い」部分を見つけてくださいね。

 もしあなたがマネージャーの立場なら、励ましたいメンバーの同僚らに「最近〇〇さんが頑張っているポイントはなに?」とあらかじめ聞いてみるとよいでしょう。人は誰しも「〇〇さんの仕事のここがいいってみんな褒めてたよ」と、伝聞で具体的な褒め言葉を受け取るとモチベーションが上がるからです。これはとても良いGiver的なコミュニケーション法です。

――そんな声かけをしてくれる上司は理想的ですね(笑)。

マイクロソフト時代の“忘れられない”上司たち

 僕のマイクロソフト時代のマネージャーの約半分は、Giverタイプでした。IT業界はトラブルが起こると徹夜作業になるのが当たり前ですが、僕らが夜中に対応作業に追われているとき、あるマネージャーがふらりと現れて「みんな帰っていいよ。あとは自分がやっとくから」と引き受けてくれたり……細かいことは言わずに、しれっと助けてくれる人が多かったですね。

 なかでも、「働き方改革」の第一人者として知られるエグゼクティブアドバイザーの小柳津篤さんは忘れられない存在です。僕が平社員のころ、隣の部署で本部長をされていたのですが、いろいろ親切にしてくださって、あるとき1on1ミーティングでこう言った。

「澤さんさ、いずれ僕を部下にしなよ。あなたのもとでメンバーになるの僕はウェルカムだよ」って。一介の平社員の僕の中にマネージャーとしての資質を見出して、後押ししてくれたんです。僕の人生を変えた「その気にさせてくれた」ひと言です。

澤円氏

 そして数年後、それは本当に実現した。ある組織改編のタイミングで小柳津さんが自由な立場を選択できるようになったとき、迷わず一プレイヤーとしての立場を選んで、僕の新しいチームに来てくれたんです。肩書とかに全くこだわらずに。

――まさにGiver的な振る舞いですね!