第28回松本清張賞を満場一致で受賞した波木銅の青春小説『万事快調<オール・グリーンズ>』(文春文庫)が映画化された。陸上部のエースにして一見スクールカースト上位で社交的にも見える女子高生・矢口美流紅(やぐち・みるく)を演じた出口夏希にインタビュー。“キラキラ”だけでない青春をどう演じたのか。同世代の共演者との撮影秘話も語った。

『万事快調〈オール・グリーンズ〉』 ©2026「万事快調」製作委員会

◆◆◆

キラキラしているけれど、それだけじゃない

──オファーを受けて、どのようなお気持ちでしたか?

ADVERTISEMENT

出口夏希(以下、出口) 嬉しかったです。矢口美流紅のような役はこれまでに演じたことがなかったので、新鮮でした。

 これまでも、結構キラキラした女の子を演じさせていただくことは多かったのですが、“まっすぐで明るくてキラキラしたキャラクター”の役が多かったんです。でも、今回私が演じた美流紅は、キラキラしているけれど、それだけじゃない一面ももっていて、そこにすごく惹かれました。

 もちろん、脚本自体もとても面白かったので、美流紅を演じられる嬉しさも重なり、撮影が楽しみでした。

出口夏希さん ©石川啓次(文藝春秋)

──スクールカースト上位に属しながら、家庭では問題を抱えている美流紅という役をどうとらえましたか。

出口 学校にいるときの美流紅も、家で母親の前にいるときの美流紅も、“本当の美流紅”ではなかったのだと思います。クラスのみんなが求める美流紅、お母さんが求める美流紅をそれぞれ演じていたというか……。

 それに対して、朴秀美(演:南沙良)やイワクマコ(岩隈真子/演:吉田美月喜)といるときの美流紅は自然で。きっと、こっちのほうが美流紅の素に近いんだろうな、と感じました。

『万事快調〈オール・グリーンズ〉』 ©2026「万事快調」製作委員会

役に共感できるか考えたことがない

──役作りについては、児山(隆)監督とも相談されたのでしょうか。

出口 監督からは、「とにかく、自由に演じていい」と言っていただいたので、思うままに演じさせていただきました。

 設定にはありませんでしたが、スクールカーストの上位にいるときの美流紅よりも、朴秀美たちと一緒にいるときの美流紅のほうが、気が抜けていて自然体に思えました。

『万事快調〈オール・グリーンズ〉』 ©2026「万事快調」製作委員会

──美流紅というキャラクターに、自分と共通するところや共感する部分はありましたか?

出口 その質問、よく聞かれます(笑)。でも正直、演じるキャラクターが自分に似ているかとか、どこに共感できるということを考えて演じたことがないんです。

 脚本をいただいて、その世界で生きているうちに、自然とそのキャラクターになじんでいくので……。

 もちろん、人間として共感できる部分はありますが、性格が自分に似ているかどうかなど、キャラクターを自分に重ねてみることは、実際にこれまでにもしたことはないかもしれません。

出口夏希さん ©石川啓次(文藝春秋)

──人間として、美流紅のどのような部分に共感できました?

出口 外にはあまり見せないけれど、いろいろなことを頭の中で一生懸命考えているんだろうな、自分にもそういう事があるな、と思いながら脚本を読んでいました。