『シン読解力』(新井紀子 著)

 著者はAI搭載のロボット「東ロボ」を開発し、「ロボットは東大に入れるか」というプロジェクトを率いた数学者だ。その過程で得たノウハウを応用し、読解力を調査・分析する「リーディングスキルテスト(RST)」を開発した。このデータを活用した前著『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』は2018年のベストセラーに。本書はその続編にあたる。

「前著も編集を担当したのですが、子どもは教科書を読めないが大人は読めるとか、本をたくさん読めば読解力は高まるといった誤解が生じ、本当は大人も読めていないし、読書では読解力は変わらないということをあらためて伝えたいと考えました。また、当時は2万5000人だったRSTの受検者が、24年には50万人に。データから読み取れるものも、より確かになりました」(担当編集者の永濱詩朗さん)

 ここでいう読解力は、物語から主人公の心情を読み取るような力ではない。教科書や新聞、学校で配布されるチラシといった、誰もが読める前提で書かれた文章を正確に読み取る力だ。そこで従来の読解力のイメージと区別すべく、タイトルに「シン」と付けた。

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 これまでシン読解力がないのは国語の能力が低いからだと思われてきた。しかし著者はかつて国語はトップクラスの成績だったのに数学の教科書が読み解けなかったという。大学の法学部に進学後、教授から数学の文章を読み解く方法を教わり、数学者になった。つまりシン読解力は才能や感性ではなく、トレーニングによって習得できると説く。

 シン読解力を身につけるには読書では不十分であり、適切なトレーニングを続ける必要があるという。本書にはRSTの例題も掲載されており、シン読解力の有無を知ることもできる。

「シン読解力と学力には強い相関関係があり、シン読解力を高める方法論を取り入れた学校で学力が向上した例を紹介しています。トレーニングは学校だけでなく家庭でもできる。そこで、子ども、大人それぞれのトレーニング方法を巻末に紹介しました」(永濱さん)

 メールやレポートなどビジネスシーンでシン読解力が必要になる場面は多い。AIを使いこなすためにも必須だろう。本書が子育て世代とビジネスマンに好評なのも納得だ。

2025年2月発売。初版1万2000部。現在6刷6万部(電子含む)