言語の起源と習得過程という本質的な問いに、専門も違えば世代も離れた学者ふたりが共同作業で迫る。そんな新書が爆発的な売れ行きを見せている。
かつては言語学の周辺的テーマであるとされていた「オノマトペ(擬音語・擬態語・擬情語)」だが、現在では重要なテーマとして脚光を浴びているのだとか。そんなオノマトペ研究の紹介を入り口に、子供の言語習得過程を考察。そこから「なぜ言語は進化の過程で、オノマトペから離れるのか」と思考を進める。そして導き出されたアブダクション(仮説形成推論)の重要性から、人と動物の差異を示し、それはAIとの違いにまで拡張される……。全体の筆致はアカデミックで硬質だが、読み味はまるで痛快なエンターテインメント作品のようだ。
「著者のお二人には最初から明確なビジョンがあり、そこに加えて、目的地に向かう探求の旅のイメージで書いてほしいとリクエストしました」(担当編集者の胡逸高さん)
ヒットの背景には、今そこにある問題への関心が。
「ChatGPTなどの言語生成AIが話題になる中、AIと人間の言語の区別を、理論とエビデンスに基づいて明確に示した。言語の問題を通じて、AI時代の人間像に深く迫っている点が、多くの読者から注目を集める理由ではないかと考えています」(胡さん)