「欧州の病人」から「欧州のエンジン」へと変貌を遂げたドイツ経済。しかし今、専門家は再び「病人への回帰」を指摘する。16年間続いたメルケル政権の「負の遺産」が明らかになった。

 みずほ銀行チーフマーケットエコノミストの唐鎌大輔氏が、ドイツ経済の現状について厳しい分析を示した。文藝春秋PLUSの番組「+RONTEN」で語った内容は、かつての「優等生」ドイツの深刻な実情を浮き彫りにしている。(全2回の2回目/はじめから読む

【ドイツの“中国依存”がもたらしたもの】BYDに負けたドイツ車|かつての財政「優等生」がいまや「病人」|若者は右派にシフト|クリーンエネルギーの未来【唐鎌大輔×マライ・メントライン】

(初出:「文藝春秋PLUS」2025年11月17日配信)

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「欧州のエンジン」が「戻ってきた病人」に

「1999年6月にイギリスの『エコノミスト』誌が、東西ドイツ統合直後のドイツが不況にあえいでいることを『欧州の病人(The sick man of euro)』と表現した」と唐鎌氏は説明する。その後、ドイツは「もはや病人ではない」「欧州のエンジン」といった見出しをつけられるほどに経済が回復していた。

 しかし近年、「ドイツは『戻ってきた病人』なのでは」という分析が再び登場している。「2023年前後から、本当にそうなのかを経済分析の観点から見てみた」結果、深刻な構造問題が浮かび上がったという。

「原発・ガス・中国」の三重苦

 ドイツ経済悪化の要因について、唐鎌氏は明確に分析する。

「原発を全部止めて、ロシアから天然ガスの供給が止まり、中国への輸出が不調になった」

 特に中国への依存は大きかった。

唐鎌大輔氏

「メルケルの16年間でドイツの貿易の10%ほどを中国に依存するようになりました。以前はその数分の1だった」

 自動車産業への打撃は深刻だ。「ドイツ高級車の3台に1台は中国で売られているという統計になっていた」時代もあったが、「去年(※2024年)初めて中国メーカーのBYDが1位になった」ことが、構造の変化を象徴している。