今ある設備で工夫を凝らす
「限られた環境」という言葉で思い浮かぶのは、昭和基地ならではのくらしの環境についてです。今でこそ昭和基地には女性専用の洗面所、トイレ、風呂がありますが、私が初めて観測隊に参加した34年前は、私で女性隊員が2人目ということもあり「女性用」施設はなく、男性と共用していました。お風呂は時間制で女性が入る時間帯が決まっていました。
南極に来ると、男性と女性の性差を大変意識させられます。観測隊といえば、つい最近まで男性中心の組織でした。このため、昭和基地にあるトイレ、風呂、洗濯&乾燥機など、女性用の生活施設の数が圧倒的に足りません。最近の女性隊員数の増加に施設の数が追いついていないのです。
このため、男性用小便器の使用を止めて、個室トイレの全てを男女共用のユニバーサルトイレとして使ったり、昭和基地にある女性用風呂は浴槽1つ、シャワーブース1つと1人ずつしか入れない大きさなので、男性隊員が使っている広いお風呂を月に一度開放してもらい、時間予約制で女性隊員も利用させてもらったりさまざまな工夫を重ねます。
白い洋服を着る人がいないワケ
また、南極では節水生活を心がけることも大切です。週に1回の洗濯は、「中水」という雪解け水を濾過せずに使うので、白い洋服は洗濯のたびにだんだん茶色になっていきます。出発前にこの状況はあらかじめ伝えられているので、南極に持ち込む洋服は全て色のついたものが無難です。そして「そういうものだ」と覚悟が決まれば、隊員たちの順応は早く、この環境に慣れていきます。
ただ、「そういうものだ」は「我慢」と紙一重で、夏の活動の期間限定のくらし方であるからこそ、苦労は皆一緒なので乗り越えられるのだと思います。
2月1日の越冬交代式後は、越冬隊は居住棟の個室へ移り、夏隊・同行者は昭和基地近くに接岸している「しらせ」の部屋へ戻ります。それぞれ、夏の期間限定のくらし方から解放されて落ち着いたくらしになると、自分が「我慢」していたことに改めて気づきます。