1993年、埼玉で起きた《愛犬家連続殺人事件》。最初の犠牲者を毒殺したあと、犯人の男は遺体を風呂場に運び込み、バケツと包丁を手に“完全消去”に取りかかった。「遺体があるから捕まる。ボディを透明にするんだ」――殺人を作業化したその異様な思想と、血も涙もない証拠隠滅の全貌を追う。文庫『世界の殺人カップル』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全3回の2回目/続きを読む

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ヤクザと交流することで「クレーム客」に対処

 こうして二人三脚の商売が始まった。浪費癖の激しい関根に対し、金銭管理能力に優れていた風間はアフリカケンネルの経理を担当する傍ら、ブリーダー(犬や猫などの動物の繁殖を行い、ペットショップなどに流通させる仕事)としての才覚も持ち合わせ、関根の右腕として活躍していく。

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 一方、関根はペットや猛獣の扱いにかけては天才的で、ブリーダーとしての腕は極めて優秀。アラスカン・マラミュート繁殖の第一人者で、その後、シベリアン・ハスキーの仕掛け役として一大ブームを巻き起こし、自らが主催するドッグショーに風間と一緒に高級車のジャガーで乗りつけるほどだった。とにかく、人間心理を読むことに長けており、そのいかつい外見とは裏腹に独特なユーモアと巧みな話術で、周囲はたちまち彼に魅了されたそうだ。

 しかし、基本的に商売の悪どさは変わっておらず、客との揉め事も日常茶飯事。中には直接、店を訪れ詐欺だと騒ぎ立てる者も少なくなった。そんなとき、関根は背中に刺青を入れ、自ら落としたという小指をちらつかせ相手を威嚇した(切断された小指は昔、暴力団の金に手をつけた落とし前だった)。

 また、地元の暴力団の力を借り、クレームを入れた客が店に来ると黒塗りのベンツを並ばせ、その前でヤクザ連中と親しげに話し、怯えた客を退散させることもしばしばだった。