2026年のNHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』がスタートしました。豊臣秀長を主人公とするこのドラマにちなみ、歴史学者の磯田道史さんと歴史小説家の木下昌輝さんにお越しいただきました。
磯田さんは文春新書『豊臣兄弟 天下を獲った処世術』を、木下さんは『豊臣家の包丁人』を、それぞれ刊行されています。磯田さんの著書は、秀長の新しい実像を史料から読み解いた一冊。木下さんの小説は、豊臣家に仕えた実在の料理人・大角与左衛門を主人公に、秀長目線で戦国の「食」を描き出した作品です。それぞれの視点から「豊臣兄弟」について語り合っていただきました。(出典:文藝春秋PLUS 前後編の前編)
「巻き込まれ型」主人公としての秀長
──まず、2026年の大河ドラマで豊臣秀長を主人公にすると決まったとき、お二人はどう思われましたか。
磯田 意外でしたね。滅びた家はNHKは大河ドラマにしにくいんですよ。関ヶ原の合戦で滅びた西軍側でも、近世大名として残った上杉や毛利は描きやすいんですが、宇喜多みたいに、島流しになって大名メンバーから落ちた家は、記録が乏しくて、いまだに作れていない。豊臣氏も滅びていて、記録が少ない。記録が少ないと想像を交えて自由に作れる面もあるけれども、大変な面もあるわけです。
しかも、秀長ですよね。記録が少ない人です。「巻き込まれ型」の方が作りやすいのは、『鎌倉殿の13人』でもそうでした。巻き込まれ型の主人公を戦国で探したとき、秀長だったんでしょう。天才的なお兄ちゃんの下に生まれちゃった弟で行こうという発想が生まれたのではないか。「NHKドラマ部員たちの選択」を、私はこう想像します。現在の戦国史研究は日進月歩で進んでいます。それを活かす形でも、ドラマが描かれていくと思います。明るく描けそうな感じですよね。実際には大変な戦いが、いっぱいあったのですが。
木下 僕は、びっくりしたのと同時に、また豊臣関連かっていう思いもありました。僕はデビュー作で宇喜多直家の話を書いたので、ずっと宇喜多をやって欲しいと思っているんですけど……。ただ、竹中直人さんが秀吉を演じた大河(1996年『秀吉』)が大好きで、その時の高嶋政伸さんがやっていた秀長も大好きだったので、あの時の感動がよみがえるのかなっていう楽しみもあります。
史料の狭間に人間のパーソナリティがある
——まず木下さんに、磯田さんの新書についての感想を伺いたいと思います。
木下 すごく面白かったです。史料と史料の間にある人間のパーソナリティがすごく重要だ、というようなことを本のなかでおっしゃっていて。僕も色々歴史を勉強して書くんですけども、やっぱりそれぞれの人物のパーソナリティが判断にすごく重要な影響を及ぼしていると思うので、そういう部分に注目されて書かれていたのが興味深かったですね。
それから、秀長が馬廻衆(うままわりしゅう)と一緒に参戦していた事実は僕も知っていたんですけども、信長の直臣として採用されていた、っていう考え方もあったのかと驚いて。そう思うと、「戦闘力のある弟」っていうイメージも出てきます。信長の馬廻衆になるっていうことはすごく体力があって優秀だったということなので。最初信長の直属だった秀長が、兄が羽柴秀吉になったタイミングで秀吉の家臣になった、と思うと兄弟観も変わってきますよね。


