圭さんのご両親は、「ぜひ」と言ってくれそうな気がしたのでお願いしたところ、快諾してくださいました。そこで、私はご自宅に伺ってご焼香させていただき、心の中で「ご両親を精一杯サポートするので、力を貸してください」と圭さんにお願いしました。

 亡くなった方には、きっと言いたいことがあるだろう、残された家族を気にしているだろう、その無念を晴らすためにも私に力を貸してほしいという思いから、私はご焼香させていただく時は、必ずそのようなことを心の中で語りかけています。

 その後、ご両親から、刑事裁判の意見陳述で述べたいことについての下書きを見せていただき、内容などについて検討して、今後の裁判への対応について具体的な打ち合わせを始めました。

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検事と共に現場を確認

 被害者参加をする際は、事前に刑事事件記録の閲覧・謄写が可能です。事故状況の捜査記録である実況見分調書には、道路の図面が書いてあり、被告人と被害者の位置関係などが示され、現場付近の写真が添付されています。ただし、私は新聞記者をしていた経験から、そういった図面や捜査官から聞いた話と、実際に自分で見た現場の印象はかなり異なる場合が多いことを知っていました。

 圭さんの事故について記録を入手した私は、実況見分調書を見て、実際に事故が起きたのと同じ時間帯に現場を確認すべきだと感じました。

 事故が発生したのが深夜1時35分頃だったので、被告人が「暗くてよく見えなかった」と弁解する可能性も考えました。本当に暗くて見えにくい場所なのか。直線道路なのにわき見していたからといって、目の前を走るバイクをそのまま後ろから轢いてしまうことがありえるのか。現場に立って体感したかったのです。

 ただ、深夜に現場に近づけるような道路かどうかも分からなかったので、私は担当検事に電話をして、「事故が起きた時間帯に現場を見たいのですが、可能でしょうか?」と尋ねました。すると、「具体的なことは警察に確認します」とのことで、さらに驚いたことに「私もご一緒していいでしょうか?」と言われました。

 検事というのは、テレビドラマと違って、よほどの大事件や、被疑者・被告人が無罪を主張していて立証が難しそうな事件でない限り、現場に行くことはありません。

 圭さんが亡くなったことは、身近な人にとっては大事件ですが、被告人は全面的に罪を認めており、その他の証拠も固かったことから、検事の申出は意外で、とても驚きました。それと同時に、一緒に現場を見ていただけるのは、本当にありがたいと感じました。そして、事故現場近くのファストフード店で待ち合わせをして、そこから一緒に事故現場に行く約束をしました。