白鵬の立場を一転させ、悪役視されるようになった“要因”

 ただ、白鵬は日本人として生きていこうと決めていた。日本人女性と結婚し、眠っているときも日本語で夢を見ている。スマホを片手に、見えない相手にペコペコ頭を下げる白鵬を何度となく見てきた。

 だが、稀勢の里への人気が、白鵬の立場を一転させた。悪役視されるようになったのだ。

©文藝春秋

 2013年11月23日の土俵をご記憶の方もいるのではないか。その日は九州場所の14日目だった。白鵬が稀勢の里に敗れると、万歳コールが起きた。翌日の千秋楽に書いた記事をご覧いただきたい。

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 あの時、白鵬の胸に去来したのは、どんな思いだったろう。

 大相撲九州場所14日目。稀勢の里に土を付けられ、負け残りの東溜まりに入った白鵬の表情が、みるみるこわばっていった。福岡国際センターに「万歳」の連呼が起きたのだ。

 あれは、まだ3年前の出来事だ。暴力団観戦問題に野球賭博事件、八百長問題と不祥事が立て続けに起き、大相撲は存亡の危機に立たされた。責任を一身に背負い、63連勝という輝かしい連勝を刻むことで、大相撲の歴史と伝統と文化と誇りを守ったのは、白鵬ではなかったか。

 十両以上の全関取でつくる親睦団体「力士会」は、いまも年間840万円を東日本大震災の被災地に寄付し続けている。向こう10年、関取の地位にある者は全員、毎月1万円を出し続ける。震災直後、力士会長の白鵬がそれを指揮した。

 総額8400万円の義援金を決めた白鵬は、直後にこう語っていた。「いつまで現役でいられるか分かりませんが、この国を背負って立つ子供たちのために活躍し続けたい」と。

 稀勢の里との、あの死闘に敗れた白鵬に、万歳コールか——。1年納めの九州場所。今年は、後味が悪い。

次の記事に続く 「協会を内部から変えていく夢は、諦めました」“相撲協会退職”に追い込まれた白鵬が複雑な胸中を吐露…“嫌われ者の大横綱”が抱えていた孤独とは

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