日本国民に愛されている国技・相撲。しかし、土俵の裏側でどんなことが起きているのか、力士たちがどんな生活を送っているのかを知っている人は、少ないのではないだろうか。
ここでは、相撲界の裏話と感動秘話を綴った朝日新聞記者・抜井規泰氏の著書『白鵬はなぜ嫌われなければならなかったのか だれも知らない角界不思議話』(講談社+α新書)より一部を抜粋。力士の「ちょんまげ」の秘密について紹介する。(全2回の2回目/1回目から続く)
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「1週間くらい洗わない」力士が髪を洗わない理由
力士の髪は「すき油」という固形のびんつけ油で整えている。これが力士の独特の香りの元だ。バニラに近いだろうか。すれ違うと、お菓子屋さんのような甘い香りが漂う。
力士用の「オーミすき油」はインターネットの通販でも買えるが、香料を加えた油のかたまりなので、いったん髪に塗ると、洗い落とすのは一苦労だ。ベテラン親方は「ママレモンで洗っていましたよ」と教えてくれた。
だから、力士は髪を洗わない。稽古で砂まみれになっても、水やお湯で流すだけだ。特に本場所中に白星が続くと、験を担いで1週間くらい洗わないことなど、ざらだ。
「頭皮には最悪ですよね」力士のヘアケア事情
まげは毎日結い直し、入念にくしを通して髪の汚れはすき取っているが、そのままでは臭ってくる。これを「すき油」の香りでごまかす。
かゆくなったら、つまようじなどで地肌を突っついてしのぐ。ちなみに、江戸時代の女性はかゆくなると簪を使った。
「頭皮には最悪ですよね」
2012年の九州場所前。関脇だった、のちの大関豪栄道(現武隈親方)が、ぼそりとつぶやいたことがある。豪栄道も若いころは中ぞりをしていたという。苦笑いしながら、「やばいですよ。いま必要ないんですから」。
