日本国民に愛されている国技・相撲。しかし、土俵の裏側でどんなことが起きているのか、力士たちがどんな生活を送っているのかを知っている人は、少ないのではないだろうか。

 ここでは、相撲界の裏話と感動秘話を綴った朝日新聞記者・抜井規泰氏の著書『白鵬はなぜ嫌われなければならなかったのか だれも知らない角界不思議話』(講談社+α新書)より一部を抜粋。大横綱白鵬が、悪役視されるようになった理由を紹介する。(全2回の1回目/2回目に続く

元横綱・白鵬 ©文藝春秋

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不祥事続きだった2000年代の角界

 大横綱白鵬が、2021年夏場所を最後に土俵を去った。25年6月には、相撲協会からも退職してしまった。

 白鵬は、なぜ退職に追い込まれたのか。白鵬は傲岸不遜な力士——と見ている方もいるかもしれない。しかし、本当にそうだったのだろうか。

 白鵬が番付を駆け上がった2000年代の角界は、これでもかというほどの不祥事続きだった。思い浮かぶだけで、

・07年6月に、時津風部屋での力士暴行死事件が発生
・10年初場所後に、朝青龍の暴行事件が発覚。朝青龍は引退に追い込まれ、白鵬が一人横綱に
・直後に、砂かぶり席での暴力団の観戦問題が発覚
・さらに、現役大関だった琴光喜らの解雇に発展した野球賭博事件が発覚。当時の武蔵川理事長(元横綱三重ノ海)が辞任

「日本人より日本人らしい」大相撲の歴史と伝統と文化を守ろうとした白鵬

 この頃、相撲の取り口も私生活もヤンチャだった朝青龍の対極にいるかのように優等生だった白鵬は、白星を重ねていく。10年の初場所14日目から九州場所2日目に稀勢の里に敗れるまで、連勝記録は双葉山に次ぐ史上2位の63まで伸ばした。一人横綱として角界を背負った白鵬は、白星を重ねることで、大相撲の歴史と伝統と文化を守ろうとした。