「水原希子さんからのリクエストが…」日本でのIC導入の“きっかけ”
――そもそも、ICという仕事の歴史はまだ浅いのですか?
多賀 もともとは9年前に、アメリカのポルノ業界について描いた『ザ・デュース(The Deuce)』というシリーズ作品でクレジットされたのが初めてだったと聞いています。
日本でICが誕生したのは2021年、Netflixの映画『彼女』でダブル主演を務めた水原希子さんからのリクエストがきっかけだったそうです。
――それが、日本初のICである浅田智穂さんだったわけですね。
多賀 そうですね。それまで日本では、インティマシーシーンについてプロデューサーや監督が俳優と話す際に、間に入れる役職がいなかったと思います。
「ノーと言えばキャスティングされない」不安への対処
――監督と直接話すとなると、断りづらかったりプレッシャーを感じたりする俳優の方も多そうです。
多賀 どうしても、製作陣と俳優部の間にはパワーバランスがあるので「ノーと言えばキャスティングされないんじゃないか」と不安に思う方もいます。なので、そこにICが入ることによってそのパワーバランスを解消する役目もあります。
現場を見てきて、監督と俳優部も、準備段階などで話す機会があまり多くないと思います。
――では、なかなか関係性が構築できないまま撮影がスタートすることも?
多賀 少なくないと思います。だからこそ、ICが間に入ることが大事なのかなと。
――ただ、ICが間に入ってくれたとはいえ、監督やプロデューサーの不興を買うことが怖くて「ノー」が言えない俳優もいるかもしれません。そういう方々を救済するような業界のシステムは何かあるのですか。
多賀 作品によっては「ハラスメントホットライン」という第三者機関を設置している場合もあって、俳優部だけでなくスタッフも含めて、現場で何か起きた際に匿名で電話などで相談をすることができるようになっています。
プロデューサーなどが「入れた方がいいね」と…ICの仕事が決まる経緯
――ハラスメントを完全になくすことは難しいとはいえ、監督と俳優が直接対面で話すのではなく、第三者が間に入ってくれるだけでも色々と変わることはありそうですね。
多賀 そうですね。直接だと、意外と本人にも「相手に圧をかけてしまっている」自覚がなかったりする場合があります。あとは、間にICが入ることによって俳優部も色々なリクエストを伝えてくれるので、その時は「良かったな」と思います。

