引退を告げられた時の心境は……?
――引退が決まった時は、家族としてホッとする気持ちもありましたか。
アンナ 苦労をそばで見てきましたが、私自身は何もしてあげられることがなく、やっぱり辛い時もありました。
そんな中で、「引退しないか」と球団から言われた時、彼が「もう痛みと戦わなくていいと思うと安心した」と言っていて。今まで人のためにばっかり生きてきた人なので、私からは、「今回ばっかりは自分のために選択していいんじゃない?」と声をかけました。
――リタさんの障害がわかった時にも、学さんの強さを感じたというお話でしたよね。
アンナ 小柄な身長や度重なる怪我など、コンプレックスと闘い続けてきた人なので、精神力の強さといったら、私個人としては野球界の中でもかなり上位に入るんじゃないかなと思ってます。
そういった苦労を乗り越えてきていることもあるし、何より、障害があろうとなんだろうと、とにかく子どもがかわいいというのが、今は一番の強さになっている気もします(笑)。
――昨年9月の引退試合の始球式では、リタさんが登板していました。
アンナ それまでなかなか試合に出られない中、一緒に過ごす時間が長かったこともあって、「パパって本当に野球やってるの?」とリタも疑問に思うくらい、普通の優しいおじさん、という感じだったんです(笑)。
でも、引退にあたって千葉ロッテマリーンズの皆さんが心のこもった演出をしてくださったこともあって、「この人、やっぱり本当にすごい人だったんだ」と改めて感じることができました。
引退後、リタは「僕と長くいてくれるならどんな仕事でもいいよ」と言っていたんですけど、コーチになったらまた忙しくなってしまって、ちょっとがっかりしているみたいです。
発信を続ける中で、障害者・マイノリティ差別に思うこと
――現在はご夫婦で障害について積極的に発信されています。
アンナ 私がリタの障害を知った時、当事者の方やそのご家族の発信に本当に助けられたんです。だから今度は、自分が誰かのために障害のことをもっと知ってもらう役割ができたらいいなと思っています。それは夫も同じ思いですね。
――一方で、SNSでは障害者といったマイノリティへの差別や偏見も見受けられます。今の風潮をどのように感じていますか。
アンナ 体調を崩しやすいとか、視力が悪いとか、もっときれいになりたいとか、世の中にはいろんな不便やコンプレックスを抱えている人がいて、それは“障害”と名のつくものだけじゃないですよね。
にもかかわらず、“障害者”だけを差別するのはよくわからないし、キツイ言い方ですけど、そんなことをする方がよっぽど心の障害じゃないですか、と言いたくなります。
「あなたはそれが不便なんだね。私はこれが不便」で、それ以上でもそれ以下でもない。互いに尊重し、支え合うことができる差別のない社会が、結局は、誰にとっても生きやすい社会だと思うんです。
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