演技の面白さに目覚めるも、一時は人間不信に

 だが、このときの映画、増村保造監督の『遊び』(1971年)で高橋は初めて演技の面白さに目覚め、改めて頑張ろうと決意、続けて映画『成熟』、大映製作のテレビドラマ『ザ・ガードマン』の最終話に出演した。その矢先、1971年12月に大映が倒産してしまう。スターだった彼女にはたちまちほかの映画会社やプロダクションから誘いの声が殺到するが、盾となってくれる会社がなくなったため彼女自ら話を聞いたり断ったりせねばならず、そのなかで業界の裏面も目の当たりにして一時は人間不信に陥ったという。

 考えた末に東宝を所属先に決めると、映画だけでなくテレビドラマにも引っ張りだことなる。なかでも1972年にスタートした刑事ドラマ『太陽にほえろ!』のシンコ役は人気を集める。出演を始めてからまもなくして火野正平がゲスト出演した回で主演に抜擢され、このときの火野とのやりとりをプロデューサーの岡田晋吉が面白がり、のちに少年課の警官から刑事へと"昇格"するきっかけとなった。

 以来、警視庁七曲署の刑事である萩原健一演じる「マカロニ」、その殉職にともない登場した松田優作演じる「ジーパン」の相手役を務めることになる。ジーパンものちに殉職するが、いちばん幸せなときにしようということで直前のエピソードから急にシンコと恋人役に設定された……という逸話も残る(岡田晋吉編『ノベライズ 太陽にほえろ!』ちくま文庫、2020年)。

ADVERTISEMENT

『太陽にほえろ!』のシンコ役で人気を博した ©文藝春秋

環境庁のクレームで撮り直しになった全裸シーン

 映画でも話題を振りまいた。熊井啓監督の『朝やけの(うた)』(1973年)では、長野県・上高地の明神池で彼女が全裸で池に飛び込んで泳ぐシーンを撮影した。物語は開拓村に生きる父娘が、自然を破壊して開発を推し進めようとする大企業と闘うという内容で、彼女の生い立ちからしてもぴったりの役だった。だが、上高地は国立公園の一部とあって、公園を管理する環境庁(当時)が「神秘的な上高地の景観を壊し、ほかの公園利用者に迷惑を及ぼす」としてクレームを入れ、同シーンは長野県内の青木湖で撮り直しとなる。

 映画公開時の週刊誌のインタビューで彼女は、これからの世の中をどうつくっていきたいかとの質問に、《五十歳になったとき、日本の自然が、少なくともいまと同じでありますように。これ以上の破壊は願い下げにしたいの》と答えている(『サンデー毎日』1973年11月25日号)。同じ記事では「何かこわいコトはない?」と訊かれ、《自分自身がコワイ》として《どんな風に変わっちゃうのかしらなんて思うとね、コワいの。人間って弱いとこあるでしょう。でもネ、私、何歳になっても、何かしたいことのある人、ユメを持ってる人、かわいい人、そして未完成な人でいたいの》と答えていた。この数年後に彼女がとった行動を思えば、何やら予見めいている。