ボート部で“外部”を見る

 大学生活は教養課程を3回、4年生を2回、計7年送ることになりました。サークルはボート部に入ったんです。当時、映画やアニメを観ていて、その世界への憧れも強かった。そんな折に雑誌「アニメージュ」を眺めていたら、アニメも映画も団体で作るものであると、今では自明のことに気がついたんです。絵を描いたり、折り紙をしたりといった個人作業が好きだった私は、一度集団に入って身体を動かそうと思い立った。

 ボート部ではコックス(舵取りやクルーへの指示を専門とするポジション)でした。初めの半年は漕手をやってからの転向。単位を落としすぎて2年半で退部することになりましたが、部活動は本当に楽しかったです。ボートなので雨の日も関係なく練習します。川辺でぼーっとして日がな過ごしたり、よい思い出ばかりです。

 合宿が多くて家から離れられたのも精神的によかった。家から20キロも離れたところにある石狩川の合宿所まで、自転車で向かっていました。朝5時に練習が始まるから真夜中の3時に出かけ、小屋に寝泊まりしていました。

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 雨の日の試合は感動しました。周囲が雨に煙る中、スーッとボートが水面を蹴って進んでくる。そういう視覚的な力に心打たれました。普段、雨の日は足元しか見ていなかったけど、こういう風景があったのか、と。姉や両親のいる家ではない“外部”を見たのはよかったと思います。

 ちょうどこの頃に家族で撮った記念写真があります。父の還暦祝いで、赤いちゃんちゃんこを着た父、母、姉、私が食卓を囲んでいる写真(本書のカバーに使用している写真)です。父がセルフタイマーで撮ったもので、母はカメラを見て微笑んでいる。

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 姉も反射的にカメラの方を見ている。私はカメラの方すら見ずに、ご飯を食べるふりをして下を向いています。

 姉に対して両親が行っていることに同意できない部分があったので、幸せな家族を装うように、カメラを見てにっこり笑うことを拒否していたんです。家族と一緒にいたくない、家にいたくないという一心でした。