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「画像、エロ、毛の生えた動物」

 やがてニュースグループというのにエロ画像が載っているらしいということを知り、海外のニュースグループをよく眺めていた。

 そこでは画像が文字に変換された状態(エンコード)で載っていて、画像を見るにはエンコードされた文字列を専用のソフト(デコーダー)に貼り付けて画像に戻す作業が必要だった。

林雄司さん ©榎本麻美/文藝春秋

 エンコードには3種類あり、その種類にあわせたデコーダーを使う必要があった。しばらくするとエンコードされたぐちゃぐちゃの文字列を見ただけでエンコードの種類がわかるようになった。まるで海を見ただけでマグロがいるかどうか分かるようなスキルだが、その後のソフトウェアの発達により一瞬で必要がなくなった。

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 ニュースグループは alt.binaries.pictures.naked.~とジャンルをピリオドでつないだ名前になっていた。グループ名でだいたいどんな内容か分かるのだが、そのなかにalt.binaries.pictures.erotica.hairyanimals というのがあった。

「画像、エロ、毛の生えた動物」である。もうどんな変態なのかと思ってデコードしてみたらバイソンやグリズリーの写真だったことがある。そのままだ。インターネットすごい、本物の変態はすごいと膝を打った。

©iStock.com

tasteless というカテゴリ

 エロ画像もひと通り見ると、tasteless というカテゴリをよく見ていた。悪趣味でだいたい面白くない冗談の画像がアップされているジャンルだ。tasteless というのはそういうニュアンスらしい。tasteless で見かけて、いまでもたまに探す画像がある。

 でかい豚の上にカウボーイハットをかぶった裸の女性が乗っていて怒っている写真だ。

 解釈不能だけど妙に惹かれる写真だった。

 90年代のインターネットはあまり良くないサイトを見ては、その多様性やら雑さ、ほとばしる情熱を楽しんでいた。

 その後、僕はトイレやガスタンクの写真を載せるウェブサイトやペリーがパワポを使ったらというウェブ記事を作っている。どれもtastelessという形容詞がしっくり来ていると思う。