1月26日、「トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)」のひとつとされる違法スカウトグループ「ナチュラル」のトップが、潜伏先の鹿児島県・奄美大島で逮捕された。「文藝春秋」に掲載されたインタビューでは、前警察庁長官で内閣官房副長官の露木康浩氏が、トクリュウとの闘いの内幕を明かしている(取材・構成=尾島正洋)。
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「トクリュウ」をターゲットに
暴力団構成員の人数は2024年末時点で、前年比500人減の9900人。20年前、構成員は4万人以上もいましたが、20年連続で減少しています。これに伴って近年、犯罪グループの構成員が変わりつつあるのです。
たとえば暴走族「関東連合」のOBグループや、中国残留孤児の二世、三世を中心に構成される「チャイニーズドラゴン」。彼らは繁華街で常習的に暴行、傷害等の事件を起こしていました。彼らには暴力団のような明確な組織構造はないものの、既存の暴力団等と密接な関係がある者も所属している。そこで2013年、当時暴力団対策課長を務めていた私は、こうした全国に何百とある反社会的グループを「準暴力団」と位置付け、取締を強化してきました。
新たな反社会的集団の最たるものが、ルフィ事件の犯行グループでしょう。暴力団は「山口組」「稲川会」など組織名があり、構成員たちも「俺は◯◯組だ」と名乗っていました。しかし広域強盗事件の犯人グループは、上層部が誰だか分からず、実行犯もその都度、SNSで募集する、非常に流動的な組織です。
彼らは、特殊詐欺などの違法な資金獲得活動によって蓄えた資金を基に、別の違法活動や風俗営業などの事業活動に進出しています。そうした活動実態を匿名化・秘匿化する傾向が顕著です。
警察の組織犯罪対策は大転換を求められている。そう考えた私は、組織犯罪対策部門に、「暴力団よりも奴らに照準を定めろ」と号令を発し、ターゲットを「匿名・流動型犯罪グループ」と名付けました。そこから生まれた「トクリュウ」という略語は、警察庁の若手が考えたものです。略語で広く世間に警戒心を浸透させ、捜査現場への強い意識づけを狙ったのです。
しかし、相手をカテゴライズしただけでは捜査は進みません。トクリュウは詐欺も強盗もやる。風俗店や闇金の経営、オンラインカジノの決済代行をする連中までいて、多様な犯罪に手を染めています。中国人系やベトナム人系など外国人トクリュウも存在します。
対する警察は、詐欺や強盗は刑事部門、ホストクラブや風俗店は生活安全保安部門、暴走族は交通部門と管轄が決まっていました。この縦割り組織ではトクリュウに対応できません。ルフィ事件のように都道府県をまたぐだけでなく、各部門を横断する対策部門を設置することにしました。捜査の司令塔を担う全国の捜査幹部が、警察庁の指示を受けて、「我々は風俗営業の問題から切り込みます」「ウチの県警は詐欺の指示役から攻めます」と戦略的にターゲットを絞って、犯罪グループを攻略していくのです。
背後にトクリュウがいると見られる悪質なホストクラブも、在任期間中に社会問題化しました。女性を“ホス狂い”にさせ、支払い能力を超える高額な「売掛金」を背負わせ、「カネがなければ売春しろ」と強要する。昨年1年間で、全国の警察に寄せられたホストクラブに関する相談は、2776件にも上りました。結果、トクリュウが多額の利益を得ていると見られます。


