「旅館に着いて荷物を開けると、そこにトランキライザー(精神安定剤・睡眠薬)とサンプーン(殺精子剤。避妊薬の一種)が入っていました。知らぬ間に姑が入れておいたようです。主人は真面目に睡眠薬を飲んでました」
今や新聞とともにオールドメディアと揶揄される当時の新興メディアが、いかに丙午迷信をあおり立て、それに少なからぬ人々が影響されたかがうかがえる。
そんな煽りとは裏腹に、昭和生まれの“ヒノエウマ・ウーマン“は、江戸や明治の丙午女性たちと異なり、結婚に苦労することもなかったようだ。
1973年に創業し、昭和の丙午女性の婚姻時期とも重なる90年代半ばまでの間に、2万6000組以上の結婚をまとめたアルトマンという大手結婚情報サービス会社があった。同社で10年以上アドバイザーとして働いたT・Nさんは、「丙午だから結婚できない」という相談は1件も受けたことがないという。
時代の追い風を受ける運周り?
2026年の丙午、世の中はどうなるのか。吉川教授は著書『ひのえうま』をこう結んでいる。
「もはやひのえうまの出生減すら起こせないほどの少子化状況。(中略)人口ピラミッドに未曽有の切り欠きを残した昭和の丙午の退出をフィナーレとして、(丙午の迷信は)360年の歴史に静かに幕を降ろす」
厚生労働省の人口動態統計によれば、コロナ禍以降、日本の婚姻数は2019年の59万8965組から、2020年には52万5490組と急減。その後も毎年少しずつ減り続けた。だが2024年の婚姻数は前年より1万322組増加し、その傾向は2025年も続いているという。
2026年度からは、児童手当の大幅拡充(2024年~)や育児休業期間中の収入支援(2025年~)といった少子化対策を加速するための「子ども・子育て支援金」制度がスタート。昭和の丙午生まれたちと同様、令和の丙午ベイビーが時代の追い風を受けてすくすくと育ち、「60年に一度の元気者」として活躍することを期待したい。
ジャーナリスト、コラムニスト
1959年、東京・浅草生まれ。1993年「激安主義」(徳間書店)にてバブル後の激安ブームを牽引。1997年からイタリア在住。テーマはスポーツ、車、グルメ、政治、歴史、教育などイタリアのカルチャーすべて。主な著書に「丙午女」(小学館)、「会社ウーマン」(朝日新聞社)など。福岡RKBラジオ「桜井浩二 インサイト」に不定期出演。
