年間売上3億円の店舗も出てきた裏では…

 川口が補足する。

「なぜ単独男性(2万円)とカップル(1万円)との入店料に倍の開きがあるかわかりますか? カップルの男性は、店に大切なパートナーを連れて来るまでに、怖がるパートナーを少しずつ口説いて洋服や下着を新調してあげてと、時間とお金をいっぱいかけています。そこにきて店が単独男性だらけでパートナーをいいようにされたら、もう行くのはやめようとなりますよね」

 金満主義の経営者たちによって、変態たちが掲げるハプニングバーの理想はよくも悪くも形骸化していた。

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 警視庁によれば、眠れぬ森の美女は創業15年を誇る老舗として知られ、1日約80人の客が訪れ、年間約3億円を売り上げていたという。

 九二五九も負けず劣らずの繁盛ぶりだった。マスコミ各社は次のように報道する。

〈警視庁は同店が2020年12月以降、SNSなどで集客し、約1億3700万円を売り上げたと見ている。〉(2023年10月30日「読売新聞」夕刊)

 そんな実態が明らかになる裏で、世の変態たちは涙を流した。「居場所」は儲け主義の「出会いバー」となり、「マニア」は地下に潜り顔を出さなくなった。川口からしても、もちろん「もっと規模を拡大したり出会いバーにしたりしてカネ儲けをすることなど簡単だった」。だが、当時の川口が出した答えはこうだった。

「目立つということは、世の中に、趣味からはじめた遊び場の店ではなく、わいせつな行為をして儲けてますよって言いふらしているのと一緒。それに大金を投じて豪華な店をつくっても、摘発されれば元も子もない。それなら現状維持でいい」

 前出の現役ハプニングバー経営者によると「現存するハプニングバーは都内に18店舗(2024年2月時点)」だが、純粋なハプニングバーに限れば「片手にも満たない」という。

 こうした現状を踏まえ、「私がつくったハプニングバーは、あと3年もしないうちに単独男女しか利用しない場所になってしまうだろう」と川口は話す。