フライト時間が永遠に感じられる地獄の痛みに…

――奥様もご一緒で。

佐藤 妻は「機内で食べるご飯買ってくるわ」と。そこまで気にしていない様子でした。僕はあまりに調子が悪かったので、「ごめん、今日は研修会に行けないかもしれない」と伝えたんです。

 でも、妻から「荷物も全部預けてしまったし、今から降ろすとなると他のお客さんにも迷惑がかかるから、とりあえず行けるところまで行かない?」と言われて。僕も「そうだよな」と納得して、搭乗口に向かいました。

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 だけど、その日に限って搭乗口までバス移動なんですよ。バスの段差を上がるのが、ものすごくキツくて。そこでハッキリと、自分の体がおかしいと思いました。やっとのことでタラップを上がって、小さい飛行機だったので座席は20列目ぐらい。でも、座ってからが痛くて耐えられなくて。

 

――機内で痛みが激しくなったのですか。

佐藤 地獄でした。もう座っていることすらできなくて、痛みが逃げるかなと考えて何度も体勢を変えたんですけど、どうにもならない。さすがに客室乗務員の方も心配して声をかけてくださいましたが、痛みでまともに返事もできないんです。フライト時間が永遠に感じられましたね。ただただ歯を食いしばって、痛みに耐えるだけでした。

――現地に着いたらすぐに病院に行こうと?

佐藤 搭乗前に妻が、現地で待ってくれている保育園の先生に「ちょっと調子が悪いので、もしかしたら病院にそのまま直行するかもしれない」と伝えてくれていました。さすがの妻も、体育会系で弱音を吐かなかった僕が、冷や汗をかきながら「痛い痛い」と言っている姿を見て、ただ事じゃないと感じたようで。

 報道の中には、僕が「エコノミークラス症候群で血栓が飛んで脊髄梗塞になったんじゃないか」と書いているものもありましたが、飛行機に乗る前からもう限界でした。

通路の手すりを掴み、手と腕だけで進んだ

――下半身の麻痺に気づいたのは、着陸してからですか。

佐藤 着陸して「車椅子がご用意できました」と教えていただいて、他のお客さんに先に降りていただいて、一番最後に出ることになったんです。

 

 ところが、通路が狭くて車椅子を僕の席まで持って来られなかったんです。一番前の席に車椅子が置かれた状態になって、職員の方に「ここまで来れますか」と。「分かりました」と言って立とうとした瞬間、腰から下がダメでした。

――感覚が全くなかった。

佐藤 はい。足が動かない、感覚がなくなってしまって。

――では、誰かに抱えられて車椅子に?

佐藤 自分で。器械体操の鞍馬(あんば)の選手みたいに、通路の手すりを掴んで、手と腕だけで前へ進みました。