NHKの教育番組『おかあさんといっしょ』の「たいそうのおにいさん」として親しまれ、現在は体操インストラクターやタレントとして活動する佐藤弘道さん(57)。2024年6月に10万人に1人と言われる希少疾患の「脊髄梗塞」を発症して、下半身麻痺に陥った。
現在は自分の足で歩けるまでに回復した彼に、歩けることで治ったと思われてしまう「見えない障害」、脊髄梗塞が指定難病に認定されていないことで生じている弊害、それを無くすために行っている活動などについて、話を聞いた。(全4回の4回目/最初から読む)
◆◆◆
「見えない障害」の難しさ
――トイレに一番苦労するとのことですが、尿意や便意は分かりますか?
佐藤弘道さん(以下、佐藤) 最初の頃は全くわからなくて。東京に戻ってきた時に、看護師さんが「佐藤さん、1回自分で排泄頑張ってみる?」ってチャンスをくださったんです。カテーテルを抜いて、おむつを穿いてチャレンジしたんですけど、1回目は失敗してしまって。
そうしたら、作業療法士の方から、「垂れ流しで大丈夫だから。それぐらいでいいんだよ。おもらししちゃったぐらいの気持ちでやってたら出てくるから」って言われて。それがうれしくて。1人でトイレに行けるっていうのって当たり前じゃないんだっていうのを身に染みて感じました。
最初に失敗した時は「ああ、駄目だった」とガクンと落ちてしまったんですが、何度も挑戦して今では1人でトイレに行けるようになりました。
尿意や便意も徐々に分かるようになって。でも、いつ出ていつ止まったのかが分からないので、立ったまま用を足すことはできません。必ず便座に座って個室で尿をしています。便もどのくらい出たのか、目視でチェックをします。
――便は以前のようにちゃんと出るのでしょうか。
佐藤 腰回りの神経が無いせいか、腸の動きも以前とは違い、3日間便が出ないこともあります。放屁(おなら)は我慢できる時とできない時があり、勝手に出てしまうことが多くあるので、電車やデパートなどの人が多いところは苦手です。
以前はウォシュレットがどこに当たっているのかが分かりませんでしたが、今は何となく分かるようになりました。
――多くの人が「退院してるし、普通に歩けているから、もう治ったのだろう」と思ってしまっているのではないかと。実際にこうしてお会いしていても、脊髄梗塞で倒れたとは思えないですし。
佐藤 退院イコール治った、と皆さん思われます。それはありがたいことでもあるんですが、この病気は難病で治らないんです。上手に筋肉を使って歩いているだけで、麻痺は残っている。そのことは、ぜひ知っていただきたいですね。
――「見えない障害」の難しさですね。
佐藤 まさにそうです。僕は幸い杖なしで歩けるようになりましたが、それは必死のリハビリの結果であって、障害が消えたわけではない。電車で優先席に座っていると、元気そうに見えるからなのか、「ん?」といった視線を感じることもあって。でも、立っているとバランスを崩しやすく、常に転倒の危険があるんです。こうした見えない部分への理解が、社会全体にもっと広がってほしいなと切に願っています。

