NHKの教育番組『おかあさんといっしょ』の「たいそうのおにいさん」として親しまれ、現在は体操インストラクターやタレントとして活動する佐藤弘道さん(57)。2024年6月に10万人に1人と言われる希少疾患の「脊髄梗塞」を発症して、下半身麻痺に陥った。

 現在は自分の足で歩けるまでに回復した彼に、「絶対に治らない」という絶望、息子たちからの励まし、絶望から立ち直ったきっかけなどについて、話を聞いた。(全4回の2回目/つづきを読む

佐藤弘道さん 

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「なぜ自分が?」という思いが、頭の中をグルグル

――医師から聞かされた「脊髄梗塞」を検索してみたら、「もう治らない」病気だと知ったとのことですが、どう考えても受け入れがたいですよね。

佐藤弘道さん(以下、佐藤) ただただ絶望でしたね。まず、わけが分かりませんでした。「治らない病気なんてあるんだ」と。腰から下の感覚がゼロである状態が、ずっと続くのかって。

「なぜ自分が?」という思いが、頭の中をグルグルとしていましたね。

――ご自身がそのような病気になるとは、夢にも思わなかったと。「たいそうのおにいさん」でしたから、誰よりも健康に気をつけていたイメージがあります。

佐藤 自分でもそのつもりでした。タバコも吸わないですし、お酒も晩酌程度。当然ですけど、運動もずっとしていましたし。倒れる前日も研修会で2時間ほど体操をして、普通にご飯を食べて寝て。それなのに朝起きたら、こうなってしまった。本当に信じられなかったです。

 

――親類に脳梗塞や心筋梗塞になった方はいますか?

佐藤 父はがんで亡くなっていて、母は高血圧ですけど、梗塞系は親類にいないですね。

珍しいのに難病指定もされていない脊髄梗塞

――脊髄梗塞は、年間10万人に1人から3人ほどしか発生しないそうですね。

佐藤 もっと少ない気がします。厚生労働省は患者の発症数を正確に把握していないので。僕は「脊髄梗塞患者の会」の方たちと交流していますが、「こんなに数はいないよね」という話をしています。珍しい病気にも関わらず、難病指定もされていないんです。

――「梗塞」と聞くと心筋や脳というイメージだったので、病名を聞いた時は驚きました。脊髄も梗塞があるのかと。

佐藤 そうなんですよね。僕も驚きましたから。

 僕の場合は胸髄の8番目あたりに何かが詰まったせいで、腰が痛くなった。これがもう少し上で起きていたら、上半身も麻痺していたかもしれない。脊髄のどこで血管が詰まるかによって、麻痺の程度も違うみたいです。