「研究者がいない」という理由で難病に認定されていない脊髄梗塞
――そうした後遺症がありながら、障害者手帳は交付されていないそうですが。
佐藤 杖なしで2km以上歩ける人は、障害者手帳をもらえないんです。杖を持っていれば、一番軽い等級の手帳がもらえるそうなんですけど。でも、僕は杖を持たずに歩くことを目標に頑張ってきたので。
――どこか理不尽さを感じますね……。
佐藤 病院の先生も「国が決めていることなので」と。昭和時代に作られた基準が、今の医療の現実に合っていないんですよね。だから新しい症例づくりをして、同じ病気で苦しんでいる方たちが少しでも前向きになれるような活動をしていきたいと思っています。
まずは脊髄梗塞を指定難病に入れないと。指定の条件はクリアしているんですが、研究者がいないという理由で認定されていないんですよ。今、僕が知っている医師の方々や議員さんも含めて、研究者を集める活動をしています。指定難病になれば、医療費の負担も軽くなる。これからこの病気になった方の不安を、少しでもなくしていきたいなと。
生命保険も、脳梗塞や心筋梗塞は対象になっているのに、脊髄梗塞は対象外。そういう制度も変えていきたいなと考えています。
――指定難病認定へ向けて、具体的にどういった動きを。
佐藤 「脊髄梗塞患者の会」などを通じて、当事者の声を一つにまとめることが重要です。どれだけの人がこの病気で苦しみ、どんな困難に直面しているのか、具体的なデータを集めて国に提示する必要があります。
僕がこうしてメディアでお話しするのも、同じ病気で孤立している方に「一人じゃない」と伝えたい、そして社会にこの病気の存在を知ってもらいたいからなんです。認知度が上がれば、研究に興味を持ってくれるお医者さんも増えるかもしれない。時間はかかると思いますが、諦めずに声を上げ続けないと。
「当たり前のことが当たり前じゃない」
――大きな病気を経験されたことで、なにかしら価値観や考え方は変わるものですか。
佐藤 基本的なところは変わっていませんが、伝え方は変わりましたね。病人だからこそ、「みんな、気を付けてね」という言葉に重みが出たと思います。
それと、「当たり前のことが当たり前じゃない」ことをすごく実感しました。「歩けることってこんなにうれしいことなんだ、立てることってこんなに幸せなことなんだ」と。そのことは、講演会などでも伝えるようにしています。
――歩けるまでの回復は、自分でも驚異的だと。
佐藤 思っています。周りにいる同じ病気の方は、みなさん車椅子なので。病院の先生やリハビリの先生も「本来なら杖をつかないと歩けないくらいなのに、なんで杖をつかないで歩けるのかが分からない」と驚いていました。
――まさか、リハビリも必要なくなっているとか?
佐藤 いやリハビリは一生続きます。やめたら、また歩けなくなってしまうので。もう習慣になっていますね。信号待ちの時や、電車に乗っている時も、座らずにできるトレーニングをしています。

