“機能不全家族”だったから統合失調症になったのでは

――藤野さんがビデオを回し始めて、それが映画となって一般公開されるのも、撮影からおよそ25年後のことでした。

藤野 姉が退院して体調が良くなってきたので、希望を感じられる部分もある映像になるかもしれないと思い、映像にまとめて公開するのも可能かもしれないと考えるようになりました。ただし、姉の承諾なしには公開できません。その確認を取るのは難しいですから、姉が生きているうちは発表できない。平均寿命(当時、女性は86歳)を考えると、あと36年経てば、世に出せるかもしれないなどと思いながら、引き続き、家族の撮影を続けました。

藤野知明さん ©佐藤亘/文藝春秋

――その後、2011年にお母さん、2021年にお姉さんが亡くなります。

ADVERTISEMENT

藤野 姉はタバコを吸うわけではないのに肺がんが見つかり亡くなります。その半年後くらいから、撮影素材をパソコンに取り込み、編集を始めました。そうして出来たものが山形国際ドキュメンタリー映画祭で上映された後、一般公開(2024年12月)されることになったのです。すると色々な感想が届くようになります。

藤野知明さん ©佐藤亘/文藝春秋

 その中に「もともと“機能不全家族(ネグレクトや虐待などが常態化した家族)”だったのではないか。だから姉は統合失調症になったのでは?」というものがありました。しかし、私の印象としては、姉が発症する前は家族同士での口論がおきたり、家の中が混乱したりしている様子はほとんどなかった。今から思えば、両親が医者であることが、姉にとってプレッシャーになっていたのかもしれないけれども、私は普通の家だったという認識です。

 だから当事者のひとりとして、「普通の家庭だったけれども、それでも姉は統合失調症になった」ということを伝えたいと思った。そうした映画の感想に答える機会も欲しかった。それがこの書籍『どうすればよかったか?』を書くきっかけにもなりました。

 それにドキュメンタリーは映像に撮れていないものは伝えられません。しかし、文章なら姉が発症する以前の家族の様子や、カメラを回していない時の出来事、当時何を思っていたのかなどを世の中に伝えることができますから。