カメラのおかげで感情を抑えて両親と話せた

――私は高所恐怖症なのですが、カメラのファインダーを覗いていると、不思議なことに高いところも平気になります。藤野さんの場合、撮影の効能といいますか、撮ることで両親と向き合えた面もあったのですか?

藤野 そうですね。カメラがあることで、父や母と会話ができたという面は確かにあります。両親と姉のことをめぐって口論し、激昂することもありましたが、撮影中に感情的になると、その姿が録画・録音されてしまうので、恥ずかしくなるものですよね。だから、カメラのおかげで私は、感情を抑えて両親と話すことができました。

藤野知明さん ©佐藤亘/文藝春秋

 父は父で、日頃は姉の病気について聞かれても、言えない、そんなことはないと否定ばかりしていたのに、撮影していると「普通ではないと思えることがあった」みたいなことを話してくれることもあった。撮られることを意識することの効果はあったと思います。

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――藤野さんの撮影について、お父さんはホームビデオの撮影だと信じていた。一方で、お母さんは「あなたの撮り方には職業的なものを感じる」と疑いを持っていたと書籍にあります。どういう所作を見て、勘づいたのでしょうか?

藤野 普通、家族同士でビデオを撮る時は、最初に「はい、笑って」と声をかけると、後は撮るだけですよね。でも私の場合は、インタビューのように色々と質問していたので、母は何かを感じ取ったんだと思います。それに私は日本映画学校でインタビュー撮影の練習をしたことがあります。当時は未熟だったので、学校で教わるようなことがそのまま出ていたのかもしれないですね。

どうすればよかったか?

藤野 知明

文藝春秋

2026年1月29日 発売

次の記事に続く 「胸ポケットからスポイトのようなものを取り出して、お茶に何かを…」統合失調症の娘と暮らす父が密かにしていた“許されない行動”

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